毎日家業×創業ラボ

「後継ぎは夫に?」パートナーと歩む二人三脚経営

清水憲司・毎日新聞経済部副部長(前ワシントン特派員)
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「ファイン」の清水直子社長=東京都品川区で、内藤絵美撮影
「ファイン」の清水直子社長=東京都品川区で、内藤絵美撮影

 歯ブラシなど口腔(こうくう)ケア製品を中心に、ユニークな商品を世に送り出す東京・品川の「ファイン」を経営する清水直子さん(53)。長く続いた迷いの時期を抜け出し、「のびのびと健やかな社長」という自分だけのスタイルを築きます。そして生涯のパートナーに出会い、今度は次世代に会社を引き継ごうとしています。

私の家業ストーリー<3>ファイン・清水直子社長

 「会社の愛し方」が分からなくて苦しんだ取締役としての約10年間。「笑顔が仕事」と割り切ったことで、むしろ会社の隅々にまで目が届くようになった副社長の4年間。そうした経験を経て、2010年、母和恵さんの後を継ぐ形で社長になった。しかし、最初は「社長とはどうあるべきか」ばかり考えていた。

 社長たるもの、朝早く出社していないといけないし、どの社員にもどんな時にも同じムードで接しないといけない。好きなバイクも降りないといけない。「しないといけない」のオンパレードだった。

 メンター役の知人に話すと、「女の姿をした男の経営はしなくて良い」とアドバイスされた。社長らしい「しないといけない」は、本当にしないといけないことなのか。一つ一つ、そう考える理由を質問されて答えていくと、そんなふうに振る舞っていないと「社員から信頼されなくなるのではないか」という思い込みがあることが分かってきた。

 社員から信頼されるには、「しないといけない」を数多くこなすことが大事なわけではない。同時に副作用があることも教えられた。「社長の私がこんなに頑張っているのに、みんなはどこまで頑張っているの?」という思考回路に陥ってしまう点だ。

 「社長らしく」にとらわれる必要はない。自分らしく「のびのびと健やかな社長」でいること、そして社員がチームワーク良く、仕事をしやすい職場の雰囲気を作ることが目標になった。

 そうした試みの一つとして、ボーナスを振り込みから手渡しに切り替えたことがある。その時に「この半年間の自分自慢」を社員一人一人にスピーチしてもらうことにした。「えー、そんなのないよ」と恥ずかしがる社員もいたが、ある男性社員の話にみんなが引きつけられた。

 男性は早起きで、毎朝4~5時に目覚めて…

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清水憲司

毎日新聞経済部副部長(前ワシントン特派員)

 1975年、宮城県生まれ。高校時代まで長野県で過ごし、東京大学文学部を卒業後、99年毎日新聞社に入社。前橋支局を経て、東京経済部で流通・商社、金融庁、財務省、日銀、エネルギー・東京電力などを担当した。2014~18年には北米総局(ワシントン)で、米国経済や企業動向のほか、通商問題などオバマ、トランプ両政権の経済政策を取材した。