熊野英生の「けいざい新発見」

東京五輪の“赤字”は2兆円超え?エコノミストの試算

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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東京五輪の閉会式が行われている国立競技場で打ち上がる花火=2021年8月8日、手塚耕一郎撮影
東京五輪の閉会式が行われている国立競技場で打ち上がる花火=2021年8月8日、手塚耕一郎撮影

 この連載では前回、東京五輪後に発生する赤字問題について考えた(「東京五輪後の『巨額赤字』誰がどう返済していくのか」)。今回は、それをより定量化してみたい。

コロナ対策費は960億円

 東京2020組織委員会が2020年12月に発表した収支見通し(第5版)では、大会の支出は1兆6440億円と見積もられている。少し複雑なのは、その経費分担が3層構造になっている点だ。大会組織委員会、東京都、国の3者が「入れ子構造」になっている。

 上層の大会組織委員会は、収入と支出は常に均衡する。第5版では、収入と支出は同額の7210億円でバランスしている。この収入と支出の規模は、当初の16年12月の第1版の5000億円に比べて2210億円膨らんだ。20年12月以降も増えている可能性が高い。

 この大会組織委員会の支出のうち、同委員会の経費削減努力や増収努力によって賄いきれない費用については、収支調整額として東京都が負担するようだ。第5版ではその金額は150億円。ただ東京都は、補塡(ほてん)額は決算時点で関係者と協議するとしている。

 第5版で考慮されていない要因に、大半の会場で無観客化したことがある。当初予定のチケット売り上げの900億円は大幅に減少する。仮に9割減ったとすると、東京都の補塡額は810億円増える。

 ほかにも、大会組織委員会の会計以外の経費に問題がある。第5版の資料では、委員会以外の部分は、支出を東京都と国が負担することになっている。その金額は、東京都が7020億円、国が2210億円である。大会組織委員会の収支が見かけ上均衡していても、3者合計の“連結負担額”は9230億円になり、これが…

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熊野英生

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。