
大手企業で働きながら、違う組織で副業をする人が増えている。キリンホールディングス(HD)は2020年7月に副業制度を導入し、1年が経過した。同社で副業をする社員2人に話を聞くと、社外の経験を通じて“ある野望”を持つことになったという。なぜ今、大企業の社員が副業をするのか、キリンHDを例に考えた。【経済プレミア編集部・田中学】
会社員の副業は政府の「働き方改革」の一環として、厚生労働省が18年にガイドラインを設け、「モデル就業規則」に副業・兼業関連の規定を盛り込んだことで流れが加速した。
リクルートキャリアが21年に発表した調査結果によると、調査対象の1660社のうち、約24%の396社が副業制度を導入している。ビール・飲料最大手キリンHDと同業のアサヒビールやサッポロビールもこの数年で導入した。
副業はコロナ禍で収入が減った企業の社員が乗り出す事例が多いが、キリンHDの場合は異なるようだ。
社内起業を目指す
「ベンチャー独自のスピード感を体験しています。ベンチャー企業の社員がお金をかけずに工夫し、短時間でしっかり成果を出すことに驚いています」
こう語るのは、キリンHDのブランド戦略部に所属し、中長期の戦略策定や新規事業を市場調査で支援している栗田一平さん(31)だ。副業では、山形県に本社を置く太陽光発電のベンチャーで戦略策定に関わっている。
もともとベンチャー企業や地域の仕事に興味があった。本業を通じてエネルギーや環境の問題に関心を持っていたこともあり、太陽光発電のベンチャーで働くことにした。
副業にあてる時間は週3~4時間程度だ。週2回ある副業先の会議にオンラインで参加している。
大手企業とベンチャーでは、メンバーやチームの雰囲気のほか、担当する仕事や社会に与える影響が違う。栗田さんにはその違いが新鮮に映る。副業を通じて、仕事の組み立てや時間の使い方の意識が変わった。オンラインでの仕事の進め方やコミュニケーションは特に参考になるという。
キリンHDと企業文化の違いは明らかなため、ベンチャーの文化に合わせて仕事をすることを意識している。それでも「ベンチャー側が私のような人材が入ることで苦労していないかどうか気になる」と漏らす。
そんな栗田さんにはキリンHDの社員として明確な“野望”がある。キリンには、社内起業ができるビジネスチャレンジという仕組みがある。この仕組…
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