東芝問題リポート

東芝・綱川社長の決算会見で見えた“大いなる矛盾”

今沢真・経済プレミア編集部
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オンラインで記者会見する東芝の綱川智社長=2021年8月12日、東芝提供
オンラインで記者会見する東芝の綱川智社長=2021年8月12日、東芝提供

 東芝の綱川智社長は8月12日、オンラインで記者会見し、2021年4~6月期決算を発表した。東芝は、経済産業省に働きかけて“物言う株主”に圧力をかけたことが外部弁護士の調査報告書で指摘され、6月末の株主総会で取締役会議長らの再任案が否決された。綱川氏は圧力問題について、「株主の提案権、議決権の行使を妨げることがあった」と認めた一方で、「コンプライアンス違反ではない」として法令違反はないとの認識を示した。

 調査報告書は、1年前の20年7月に行われた定時株主総会をめぐり、当時の車谷暢昭社長らが経産省幹部とともに、大株主である複数の海外投資ファンドによる議案提出や議決権行使を妨害したと詳細に記述した。報告書はその中で、東芝幹部が経産省側から「国家公務員法の守秘義務に抵触しうる様態での情報提供を受けていた」と指摘し、法律違反の疑いがあるとの認識を示していた。

 「コンプライアンス違反ではない」との綱川氏の発言は、調査報告書の認識を半ば否定するものだ。一方の当事者である経産相の梶山弘志氏は「法令違反はなかった」と閣議後会見で繰り返し発言しており、経産省に配慮した発言とみられる。

ガバナンス強化委員会の設置

 では綱川氏は、調査報告書の内容を否定したのかというと、そうではない。綱川氏は、外部有識者で構成する「ガバナンス強化委員会」を設けたと会見で説明した。同委員会では、調査報告書の事実認定をもとに、投資ファンドへの「圧力問題」について、真因を究明し、責任の所在を明確化し、再発防止策を提言するというのだ。

 しかも、ガバナンス強化委員会のメンバーには、調査報告書をまとめた弁護士の1人が加わった。…

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今沢真

経済プレミア編集部

1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀キャップ、財研キャップ、民間企業キャップを歴任。2013年論説委員。15年経済プレミア創刊編集長。19年から同編集部。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」など。16~18年度城西大非常勤講師。