藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

藻谷氏が見たドバイ「無国籍な人工都市」の栄華

藻谷浩介・地域エコノミスト
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世界で最も高いビル「ブルジュ・ハリファ」の124階にある展望台(写真は筆者撮影)
世界で最も高いビル「ブルジュ・ハリファ」の124階にある展望台(写真は筆者撮影)

アジアのメガシティーこぼれ話編(4)

 筆者がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイを初めて訪れたのは、シンガポールに住んでいた2009年である。リーマン・ショックに続くドバイ・ショックがあった年で、直前までバブル状態だったこの町は、困惑と沈滞の中にあった。世界一高い建造物「ブルジュ・ハリファ」は、巨大な姿を現していたが、開業予定日を何度も遅らせている最中で、その真横に開業した世界最大の「ドバイ・モール」は、墓場のように静まり返っていた。はたして今回は。

英国資本が拠点を置いた自由貿易港

 2018年3月。中東を巡る1週間の旅の最初と最後に1泊ずつ、筆者はドバイ国際空港の近くに泊まった。それぞれの日に市街を巡ってみたが、出合ったのは2009年とは打って変わったにぎやかさである。

 ドバイ国際空港から都心へは、ドバイ・メトロと呼ばれる高速鉄道が走っている。前回訪問時には開業直後で、未開業の駅が多くあったが、今回は2路線・全長90キロ弱がフルに運行しており、近畿車両製の流線型のデザインの高速車両が頻繁に行き交っていた。料金は区間によって違うが、都心へは200円かからずに行ける。

 ドバイの旧市街地は、ペルシャ湾から東方向に内陸に切れ込んだ入り江(ドバイクリーク)の南北両岸だ。空港からドバイ・メトロで行けば、ユニオン駅から西の一帯である。伝統的な木造のアーケード街が続き(クウェートなどにもある)、クリークを伝統の木造船で渡るのも、どこか郷愁あふれる体験だ。

 港にするのには格好のこの場所に、現在のドバイ首長家がアブダビから移住して独立したのは1833年。その後は、英国資本が拠点とする自由貿易…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。