海外特派員リポート

「学習塾の新設認めず」中国の“過剰”教育規制の波紋

小倉祥徳・毎日新聞中国総局(北京)特派員
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入学希望者が殺到し、周辺のマンション価格が高騰する北京市内の有名小学校=2021年8月6日、小倉祥徳撮影
入学希望者が殺到し、周辺のマンション価格が高騰する北京市内の有名小学校=2021年8月6日、小倉祥徳撮影

 中国で今、当局の新たな教育政策が大きな波紋を広げている。小中学生向け学習塾の新規開設を認めず、既存の塾は非営利化することを求めているからだ。このため、関連企業の株価は大きく落ち込んだ。

 中国で国民の教育熱は高く、賛否は分かれている。なぜ、ここまでの規制が必要だったのか。人々の生活にどんな影響が出ているのか、現地で取材した。

政府方針に戸惑い

 「英語塾はもう厳しいです。これからはバイオリンと書道を中心にするしかありません」

 北京市内で小中学生向けの課外教室を個人経営する女性(45)は、政府の新方針に戸惑いを隠せない。

 女性は長く食品の卸小売業を営んでいたが、小学生の長女を英語や国語の学習塾に通わせた際、月謝の高さに面食らった。

 そこで「教育産業はもうかるのではないか」と自ら起業を決意。今年2月から各科目の講師5人と契約し、教室の運営を始めた。生徒増が期待できる英語塾を強化しようとした矢先だったという。

「想定外の極端な厳しさ」

 中国の教育界に衝撃を与えたのは中国共産党・政府が7月24日に発表した「義務教育の生徒・児童の宿題負担と校外教育負担を一層軽減することに関する意見」(略称・双減)という通知だ。

 まず、宿題については、小学1~2年生への筆記式の宿題を禁止▽3~6年生の宿題は60分以内、中学生は90分以内▽代わりに家事やスポーツ、読書などを奨励する--などと規定した。日本のかつての「ゆとり教育」を思わせる内容だ。

 だが、それ以上に大きな注目を集めたのが「学外教育」の規制だ。学習塾の新設は認めず、既存の学習塾は非営利組織とする▽株式市場で調達した資金を学習塾事業に投資することを禁じる…

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小倉祥徳

毎日新聞中国総局(北京)特派員

東京都生まれ。2001年入社。秋田支局を経て06年から東京経済部で財務省、内閣府、経済産業省、国土交通省、日銀、証券、エネルギー業界などを担当。17~19年には中部本社でトヨタ自動車などを取材した。東京経済部、外信部を経て20年10月から経済担当の中国総局(北京)特派員。