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在宅勤務こそ「ストレスチェック」会社がすべきことは

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
 
 

 須田さん(仮名、40代女性)は、従業員数約500人のIT企業の人事部長です。会社は新型コロナウイルスの感染拡大以降、ほぼ全員がリモートワーク(在宅勤務)をしています。「従業員と直接接することが少なくなり、体調などが気になっています。従業員にはストレスチェックを活用してもらいたいのですが、年々受ける人が減っていると、会社の衛生委員会(注)から報告を受けていて、困っています」と相談を受けました。

ストレスの形が変化?

 新型コロナの感染拡大で、リモートワークが長期化しているケースも少なくありません。リモートワークが始まった当初に仕事のやりづらさを感じてストレスを抱える人もいました。それが長期化すると適応障害や睡眠障害など心身に影響が出る場合もあります(本欄「テレワークで音信不通に『部下の異変』を見逃した上司」参照)。ストレスの形が変化しているといえるでしょう。

 従業員が自身のストレスの状態に気づくためにも、ストレスチェックをうまく活用してもらいたいものです。ストレスチェックは、2014年の労働安全衛生法(安衛法)の改正で、15年から従業員数50人以上の事業所に年1回の実施が義務づけられています。注意したいのは、これは会社への義務であって、従業員には受検する義務はなく、会社が受検を強制できないことです。

 私は、須田さんに改めてストレスチェックの仕組みや活用法について話し、従業員の受検率を上げていくための方法を一緒に考えました。

三つの事項でストレス度合いを把握

 ストレスチェックは、調査票に回答する形式で行います。オンラインで行うこともでき、スムーズにできれば所要時間は15~20分…

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産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。