熊野英生の「けいざい新発見」

「なぜ緊急事態宣言は効かないか」ゲーム理論で考える

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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新型コロナウイルス感染症対策本部の会合後、記者会見する菅義偉首相(左)=首相官邸で2021年8月17日、竹内幹撮影
新型コロナウイルス感染症対策本部の会合後、記者会見する菅義偉首相(左)=首相官邸で2021年8月17日、竹内幹撮影

 政府は、東京都などで7月12日から始めた4回目の緊急事態宣言を9月12日まで延長した。当初、8月22日までの予定が8月31日になり、その後9月12日になった。もう1~2回延長しても不思議はない。「今回で最後の緊急事態宣言となる覚悟で」という菅義偉首相らの言葉は、今はむなしく聞こえる。東京五輪は終わったが、緊急事態宣言は断続的に年末まで続くだろうという見方も多い。筆者は人々の行動について、ゲーム理論などで考えてみた。

 筆者が少しこだわって考えたいのは、今回の緊急事態宣言は、以前に比べて新規感染者数を減らす効果が失われている点だ。この原因を明らかにしなくては、どれだけ長く緊急事態宣言を続けたところで無意味だ。

 宣言を出せば、経済損失は確実に出るため、このままでは効果は乏しくて損失が累積するだけに終わる。日本経済の体力だけを無益にすり減らすような作戦を続けてはならない。失敗の原因を洗い出し、新規感染者数を減らす作戦を立て直す必要がある。

自分の言葉で話さないと伝わらない

 巷間(こうかん)言われるのは、リーダーの言葉が国民に刺さらないという指摘だ。確かに「新型コロナの恐怖」は言い尽くされた感はあるが、本当にどれだけ怖いのか、十分に伝わっているだろうか。

 筆者が考えるに、むしろワクチンを打てば副反応が出るという話の方が妙にリアリティーがある。感染リスクよりも、自分のワクチン接種で「もしも副反応が出たら怖い」という心配が強くなる。

 自分がコロナに感染したときの恐怖は多くの人に縁遠い。しかしこの点は、例えば、身近な人がコロナで重症化してしまったりすると、様相はまったく変わる。元気だった人…

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熊野英生

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。