経済記者「一線リポート」 フォロー

根深い就活セクハラ、被害者の声から浮かぶ背景

日本製鉄の本社=東京都千代田区で2021年6月18日、井川諒太郎撮影
日本製鉄の本社=東京都千代田区で2021年6月18日、井川諒太郎撮影

 企業の採用担当者による就活セクハラが後を絶たない。6月には、いずれも業界大手の近鉄グループホールディングスや日本製鉄で相次いで発覚した。厚生労働省の委託調査では、男女合わせた就活生の4人に1人が被害に遭ったと回答している。毎年のように指摘されながら、なぜ続くのか。取材を進めると、加害者だけではなく、採用する企業側の問題も浮き上がる。

「内定取り消し」匂わせ

 「自責、自己嫌悪、無気力などで夜中に何度も目が覚め、悪夢にうなされる。これが毎日続いている」。取材に応じてくれた女性は、電話越しに就活セクハラに遭った後の心情を語った。「自分が我慢すればと思っていた」「自分も悪いところはあった」。声を震わせながら話す様子に、なぜ被害者がこうして苦しまなければならないのかとやるせない気持ちになった。

 この女性は、日鉄の東日本製鉄所鹿島地区(茨城県鹿嶋市)の中途採用試験を受け、1月に採用通知を受け取った。その後、採用担当の男性社員から「仕事で必要」などと促され、無料通信アプリ「LINE」の連絡先を交換。それから性的関係を迫るような行為が始まった。

 男性社員はこの女性に対し、採用予定の別の女性の名前を挙げて「(その女性が性的関係を)断ったら内定取り消しだよ」などと話したという。過去にも気に入らない社員を辞めさせたことがあった、と誇らしげに語ったこともあり、女性は「自分も辞めさせられるのでは」と強い不安を抱いた。恐怖心から入社できなくなった。

 日鉄は男性社員を懲戒解雇にした。卑劣な手段に及んだ男性社員は許されないが、会社側の対応にも疑問を感じた。問題を日鉄が把握した後、上司が男性社員を伴い、女性…

この記事は有料記事です。

残り1999文字(全文2697文字)