
独身のA代さん(48)は親元で暮らしながら、パートタイマーとしてクリーニング店とスーパーを掛け持ちして働いています。先日、スーパーで勤務中に、ぬれていた床で転び、膝の骨を骨折して歩けなくなりました。スーパーで労災保険を申請してもらえましたが、クリーニング店もしばらく休まなければならず、収入の面で不安を抱えています。
けがでクリーニング店の仕事も休みに
A代さんは数年前に離婚して親元に戻りました。子供はいません。生活費を稼ぐために働くことにし、親の通院の付き添いなどがあるため、自分の都合に合わせられるパート勤務を選びました。
最初は、近所のクリーニング店の受付のパートだけでしたが、店側の都合で勤務シフトが減ったため、1年ほど前にスーパーでも働き始めました。そうした中、スーパーでけがをし、クリーニング店の仕事も休まざるを得なくなりました。
A代さんの収入は、勤務シフトが減ったとはいえ、その3分の2がクリーニング店からのものです。労災保険で、働けない期間の給料を補償してもらえますが、スーパーの勤務分だけではわずかです。主治医からは職場復帰まで2カ月ほどかかるといわれており、収入の面だけでなく、休んでいる間にクリーニング店の仕事がなくなってしまうのではないかと心配しています。
ダブルワークをする人の労災の取り扱い
ダブルワークをする人の労災保険の仕組みについて説明します。ダブルワークや副業・兼業をする人に対する労災保険の取り扱いが、労働者災害補償保険法(労災保険法)の改正で2020年9月から変更となりました。この変更を踏まえて、A代さんのようなけがをしたケースを考えます。
まず、労災保険の基本をみていきます。
働く人が勤務中にけがをした場合、労災保険の給付を受けることができます…
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特定社会保険労務士
大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/