冨山和彦の「破壊王になれ!」

冨山和彦氏 東京五輪のレガシーは「昭和」との決別

冨山和彦・経営共創基盤グループ会長
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全選手団が入場し、花火が上がった東京オリンピックの開会式=東京都新宿区の国立競技場で2021年7月23日、久保玲撮影
全選手団が入場し、花火が上がった東京オリンピックの開会式=東京都新宿区の国立競技場で2021年7月23日、久保玲撮影

 いろいろな議論があり、新型コロナウイルスの感染拡大が進む中で始まった東京オリンピック・パラリンピックだが、競技が始まるとその熱戦に多くの国民が魅了されたように思う。私もその一人である。超人とも言える世界トップのアスリートたちが4年に1度の真剣勝負を繰り広げるのである。究極のリアルタイム、リアルドラマが、エンターテインメントとして最高に感動的で最高に面白いのは当然なのだ。

迷走の主役は「昭和のおじさん」

 これに対して、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の幹部発言や人事を巡るゴタゴタ、開閉会式のリーダーシップを巡るドタバタなど、競技場の外では次元の低い迷走が繰り返された。

 その主役は昭和な感じの「おじさん」たちと昭和な感じの「利権仕切り屋」稼業の人たち。私には、今回の東京五輪を1964年の「昭和の東京五輪」の再来、昭和のころの繁栄の日本をもう一度という感じで期待していた人たちが演じてみせたイタい三文芝居のように見えた。

 実際、オリンピックの開会式の見せ物には、高校の文化祭の出し物の延長上のような内輪受けというか、日本的なナンセンスギャグっぽいものが少なくなかった。そして唐突に入ってくるステレオタイプな「日本文化」もの。一部の報道によると昭和世代のお偉いさんたちの「推し」だそうで、だとするとこの脈絡のなさもむべなるかな。

「なんだかなあ」と感じたイベント

 五輪招致当時、中心人物は当時の猪瀬直樹都知事だった。私は猪瀬さんの副知事時代にいくつかの重要な仕事を手伝っていたこともあり、五輪招致への思いや理念はよく分かっていたし、それが「昭和の繁栄をもう一度」のような前回の東京五輪へのノスタルジー的なものとは無縁なものであることもよく理解していた。

 だから彼が都知事になるときの応援団の一人だったし、今回の東京五輪が、新しい時代の扉を開く転換点、長く昭和の成功モデルの呪縛で停滞してきた日本を、新しい世代、若いデジタル世代に解放するきっかけになることを期待していた。私自身も経済界でそれなりの要職にいた関係で手伝いを頼まれたので、できるだけ協力するつもりだった。

 ところが、である。招致成功後に初めて国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が訪日して、いわば大会準備のキックオフイベントがあり、そこに顔を出してみたら、会場…

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冨山和彦

経営共創基盤グループ会長

 1960年生まれ。東大法学部卒。在学中に司法試験に合格。米スタンフォード大経営学修士(MBA)。ボストンコンサルティンググループなどを経て、政府系企業再生ファンドの産業再生機構の最高執行責任者(COO)に就任し、カネボウなどを再建。2007年、企業の経営改革や成長支援を手がける経営共創基盤(IGPI)を設立し最高経営責任者(CEO)就任。2020年10月よりIGPIグループ会長。日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役社長。