米国社会のリアル

学校再開の米国社会「リスクをとる選択」の考え方

樋口博子・ロス在住コラムニスト
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対面授業を受ける生徒たち。中央奥はニューサム・カリフォルニア州知事=同州オークランドで2021年8月11日、AP
対面授業を受ける生徒たち。中央奥はニューサム・カリフォルニア州知事=同州オークランドで2021年8月11日、AP

 コロナ禍の終わりが見えません。今夏は感染力の強い「デルタ株」が世界各地で猛威をふるい、子供たちにも感染が広がっている状況です。そんな中、私が暮らす米カリフォルニア州では8月半ばから新学期がスタートし、対面授業が始まりました。すべての授業を対面で行う「完全再開」であり、約1年半ぶりのことです。

 一方、日本ではデルタ株の感染拡大を懸念し、夏休みの延長や分散登校を決める自治体も出ています。米国内にも当然、不安の声はありますが、なぜカリフォルニア州は「完全再開」に踏み切ったのでしょうか。

懸念点も多いが……

 私の娘(中学生)が通うロサンゼルス郊外の学校区(パロス・バーデス)でも、8月25日から「完全再開」が実現しました。久しぶりに学校に通える娘は遠足にでも行くかのような興奮状態で、近所の友達と登校する姿に私もうれしさがこみ上げました。

 昨年3月以来、子供たちの多くはオンライン教育漬けでした。教育格差やメンタルヘルスの悪化といった負の側面が指摘され、デルタ株の流行前から「子供たちを学校に戻すこと」が重要課題になっていたのです。

 完全再開が認められる学校の条件は、教職員にワクチン接種か毎週の検査を義務づけること。そして教職員と生徒のマスク着用義務化です。同学校区における教職員のワクチン接種率は95%以上(自己申告)。12~17歳の接種率(1回目)も約93%まで伸びていますが、学校区内にはワクチン接種や検査ができるクリニックが数カ所設置され、普及活動や感染対策が今も続いています。

 もちろん懸念点もあります。

 ロサンゼルス市統一学校区では約45万人の生徒の対面授業が開始されましたが、1週間…

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樋口博子

ロス在住コラムニスト

 兵庫県生まれ。ロンドン大修士(開発学)、東大博士(国際貢献)。専攻は「人間の安全保障」。2008年、結婚を期にロサンゼルスに移住。渡米前はシンクタンク、国際協力銀行、外務省、国際NGOで開発途上国支援に取り組んだ。米国で2019年に独立。地元コミュニティーを地域や日米でつなぐ活動をしている。カリフォルニア州議会下院議員アル・ムラツチ氏(民主党)は夫。