人生100年時代のライフ&マネー

老後2000万円不足問題「コロナ禍で黒字転換」の謎

渡辺精一・経済プレミア編集部
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 金融庁の金融審議会が2019年に公表した報告書が「老後2000万円不足」問題として大反響を呼んだのはまだ記憶に新しい。高齢夫婦世帯の月平均の「不足分」を積み上げると30年で2000万円になるという数字が独り歩きした。だが、それから2年余りのうちに、この「2000万円」の状況は一変している。

「2000万円なんて無理」で炎上

 まず、発端となった報告書の中身をおさらいしよう。金融審議会の市場ワーキンググループ(WG)が「高齢社会における資産形成・管理」をテーマに作成し、ポイントは以下の3点だった。

 (1)公的年金は老後生活を支える柱だが、現状、平均的な高齢夫婦は貯蓄を月々取り崩しており「人生100年」時代では約2000万円不足する計算だ。そのため(2)個人型確定拠出年金(イデコ)などを活用して現役時代から長期的に資産形成をすることが重要になる。また(3)金融機関は、顧客の利益を最優先するサービスを提供して、それを支援する必要がある。

 報告書の論点は(2)(3)で、「2000万円」はその前提として挙げたものだが、ネットで「2000万円なんて無理」と炎上し、メディアが批判的に取り上げたため、数字だけが焦点になってしまった。報告書は政治問題化し、麻生太郎金融担当相が受け取りを拒否したため、事実上撤回された。

 2000万円の根拠は、総務省「家計調査」だ。「65歳以上の夫と60歳以上の妻」からなる高齢夫婦無職世帯の収入から支出を差し引いた「不足分」は17年で月平均5万4519円。報告書はこれを「老後30年(360カ月)とすると約2000万円になる」と計算した。

「平均的な老後家計」の目…

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渡辺精一

経済プレミア編集部

1963年生まれ。一橋大学社会学部卒、86年毎日新聞社入社。大阪社会部・経済部、エコノミスト編集次長、川崎支局長などを経て、2014年から生活報道部で生活経済専門記者。18年4月から現職。ファイナンシャルプランナー資格(CFP認定者、1級FP技能士)も保有。