経済記者「一線リポート」

素材選びが自由すぎ? 国産ジン開発ブームのわけ

小坂剛志・大阪本社経済部記者
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2016年の発売直後から海外で高い評価を得た「季の美 京都ドライジン」=京都市中京区で2021年8月5日、小坂剛志撮影
2016年の発売直後から海外で高い評価を得た「季の美 京都ドライジン」=京都市中京区で2021年8月5日、小坂剛志撮影

 マティーニをはじめとしたカクテルに使われる「ジン」の国内生産量が増えている。日本洋酒酒造組合によると、2020年の国内出荷量は195万リットルで前年から5割増え、5年前の1・9倍に上る。全国の酒造会社による商品開発が相次いだためで、“自由すぎる”素材選びが開発者の創作意欲を引き出しているのだという。どういうことなのだろうか。そしてどんな素材が使われているのか。開発の現場を訪ね、新商品が相次ぐ理由を探った。

 記者がジンに興味を持ったのは21年7月。新型コロナウイルス禍で「家飲み」の回数が増えていた頃、スーパーやコンビニに並ぶ国内ジンを目にしたことがきっかけだ。ジンといえば、カクテルで使う外国産商品のイメージが強かったが、国内各地でジン商品が生まれていることに驚いた。

 その2週間後、京都市役所近くにたたずむ一軒の町家を訪ねた。玄関まで敷かれた飛び石を歩いて室内に入ると、モダンな木材家具が並び、オレンジ色の間接照明が壁際のボトルを照らしている。ここは、国産ジン「季(き)の美(び)」をアピールするためのブランドハウス。20年に開設され、テイスティングセミナーなどが開かれている。

 16年に発売された「季の美 京都ドライジン」(700ミリリットル、希望小売価格5500円)は、海外の酒類品評会で最高賞を受賞。高品質な「国産クラフトジン」の先駆けと言われている。生産しているのは15年創業の「京都蒸溜所」(京都市南区)。創業から間もない会社のジンが、なぜ発売直後から世界中で高い評価を得たのだろうか。

京都の複数の素材をブレンド

 「ずっとウイスキービジネスをしてきたが、新しいことを試してみたかった。ジンも京都も大好きだったので、必ずいい商品がつくれると思っていた」。流ちょうな日本語で語るのは、京都蒸溜所を創業したデービッド・クロール社長(58)。母国の英国で日本の金融機関に勤めていたのをきっかけに研修で京都を訪問。退職後、長年にわたって日本でウイスキーの輸入や輸出の仕事をしており、14年から京都でジンの開発を始めた。

 ジンは、大麦麦芽やトウモロコシといった穀物などでつくった蒸留酒に、北半球の寒冷地に分布する針葉樹の実で、ジン独特の爽やかな味を出すジュニパーベリーを合わせる。さらに、果実や樹皮、種などの「ボタニカル(植物)」で香りづける。「クラフトジン」と呼ばれる商品が急増しているが、明確な定義はなく、原料や製法、産地に強いこだわりを持ってつくられるジンを意味することが多い。

 京都蒸溜所では、開発にあたって海外から製造責任者を招き、米からつくるライススピリッツに、ボタニカルとして地元農家の玉露やユズ、サンショウなどを取り入れ、…

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小坂剛志

大阪本社経済部記者

 1980年山口県生まれ。関西学院大卒。松江や高知、奈良支局を経て2015年から大阪経済部。2019年から東京経済部で自動車業界、国土交通省を担当。2021年から再び大阪経済部。