経済記者「一線リポート」

ノンアルが普及すれば下戸に優しい社会となるか

久野洋・西部経済部
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量販店には、さまざまな種類のノンアルコール飲料がずらりと並ぶ=福岡県粕屋町のミスターマックス粕屋店で2021年6月16日、久野洋撮影
量販店には、さまざまな種類のノンアルコール飲料がずらりと並ぶ=福岡県粕屋町のミスターマックス粕屋店で2021年6月16日、久野洋撮影

 新型コロナウイルスの感染を抑制するために飲食店で酒類の提供が制限され、代わりにノンアルコール飲料が注目されている。グラス1杯のビールで酔っ払う記者は、たびたび「飲めない人生なんて」とあきれられ、理不尽さを感じてきた。今回のノンアルブームは下戸を取り巻く環境を変えるのではないか――。そんな期待を胸に現状を取材した。

海外発の高級路線も浸透

 「癖があるでしょう。我々が目指すのは、おいしいジュースではありません」。飲食店向けのノンアル飲料を開発する福岡市のベンチャー企業YOILABO(ヨイラボ)で、試作品を手にした播磨直希社長(29)がほほえんだ。記者が口に含むと果物の酸味や調味料の風味が感じられ、不思議な感覚に驚かされた。

 こだわるのは料理との相性だ。播磨さんは、コース料理にワインや日本酒を合わせる楽しみを下戸にも知ってもらおうと2019年に起業した。料理店の要望を聞きながら果汁をベースにスパイスや茶葉などをブレンドして、洋食に合う6種類のドリンクを商品化。東京のフランス料理店やホテルに納入している。現在は和食向けを開発中だ。

 こうしたジュースとも異なる食事用のノンアル飲料は、欧州で先行している。ノンアル飲料を輸入する商社、アルト・アルコ(東京都)の安藤裕社長(30)によると、15年ごろからロンドンを中心に欧米でブームが起き、有名料理人が手掛けた商品は1本数千円と酒類並みの価格で売られている。日本にも輸入され、東京を中心に高級レストランで徐々に浸透しているという。

 食事と合わせた印象を知りたくて、ネット交流サービス(SNS)に感想を投稿していた大学教員の女性に取材した。東京都内…

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久野洋

西部経済部

1981年熊本県生まれ。2004年入社。松江支局を振り出しに、姫路、神戸支局、大阪編集制作センター(紙面を編集する部署)、大阪経済部を経て現職。支局では主に行政、大阪では大手メーカー、福岡では地銀や流通・小売り業界の取材を経験し、21年から運輸業界担当。企業の動きを通して、トレンドや社会、暮らしの変化を読み解くことが楽しい。住宅業界で働く妻と家事育児を分担しながら3人の子どもを育てており、趣味が釣りから料理に変わった。