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大手商社「資源高で過去最高益」次の事業戦略は?

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資源高はいつか終わる 次の戦略は

 大手商社5社の業績が、資源高を追い風に過去最高水準で推移している。2021年4~6月期の連結最終(当期)利益は、伊藤忠商事、三井物産、丸紅、住友商事の4社が四半期ベースの最高を更新した。中でも、三井物産は22年3月期の最終利益を、期初予想の4600億円から6400億円に上方修正した。6000億円を突破すれば、商社業界で初となる。過去の最高は三菱商事が19年3月期に出した5907億円だ。(商社2021)

最高益で三つどもえ

 他社も軒並み通期で過去最高益を見込む。伊藤忠の通期予想は5500億円だが、4~6月期だけで進捗率は49%に達し、6000億円超えも射程圏内だ。丸紅の2300億円も過去最高更新をうかがう水準だ。住友商事も2300億円の期初予想を2900億円に上方修正した。三菱商事は3800億円と通期予想を据え置いたが、担当アナリストからは「6000億円台」と最高益更新の予想も出ている。今期は伊藤忠、三井物産、三菱商事が三つどもえで6000億円超の利益をうかがい、やや離れた水準で丸紅と住友商事が競う展開が予想される。

 前期の21年3月期、商社は新型コロナウイルス感染拡大や米中貿易摩擦の影響を受けて苦戦した。しかし、今期は資源高で息を吹き返した。欧米の経済回復が進む中で、インフラや自動車向けで鉄鋼や銅需要が急回復し、価格が上昇した。商社は大なり小なり鉄鉱石や銅の開発・生産事業を持つ。その事業からの取り込み利益(出資比率に応じた子会社、関連会社の純利益の取り込み額)が急増したのだ。

 その代表格が三井物産だ。同社の4~6月期の豪州鉄鉱石事業の取り込み利益は前年同期比123%増の920億円だった。伊藤忠も豪州鉄鉱石事業▽丸紅は豪州鉄鉱石事業やチリ銅事業▽三菱商事はカナダやチリの鉄鉱石事業やチリ銅事業▽住友商事はブラジル鉄鉱石事業──がそれぞれ好調だった。なお、住友商事は、設備の低稼働などから赤字続きだったマダガスカルのニッケル製造事業が、前年同期661億円の赤字から126億円に黒字化したことも貢献した。

 しかし、足元の資源高は、金融緩和で投機マネーが流入した側面も根強く、「定常状態よりかなり高い」(三井物産の堀健一社長)。資源高もいつかは終わる。更に世界的な「脱炭素」の潮流の中、資源やエネルギー事業が経営リスクになる可能性もある。たとえば鉄鉱石や原料炭(製鉄用石炭)。高炉で鉄鉱石を石炭で還元する手法は、二酸化炭素を大量に排出する。長期的に、鉄スクラップを電炉で溶かす手法や、高炉で水素を使って還元する手法へ移行すれば、鉄鉱石や原料炭の需要は激減する(詳しくは22ページ)。三井物産や三菱商事が「石炭よりは低炭素」であることを売りに開発・販売を進めるLNG(液化天然ガス)についても、欧州では「排出ゼロではない」と懐疑的な見方もある。

消費者直結事業も好調

 本誌では、伊藤忠、三井物産、丸紅、三菱商事の社長にインタビューした。4人からは「ポスト資源ビジネス」「脱炭素社会」を意識した言葉が聞かれた。

 まず、4人とも脱炭素を商機ととらえている。三井物産の堀社長は「ESG(環境、社会、ガバナンス)のEで主役になりたい」と説明。同社は1970年代から石油・ガス開発を手掛けてきた。二酸化炭素フリー燃料として期待される水素は、中期的には天然ガス原料が主流だ。また、普及が見込まれる二酸化炭素の貯留は、地中への圧入を意味する。いずれも同社の石油・ガス開発や地質学の知見を生かせる。

 脱炭素ビジネスを消費者視点で組み立てようとしているのが「非資源(小売りや食品など)ナンバーワン」を標榜(ひょうぼう)する伊藤忠だ。石井敬太社長は「消費者が『こんなにプラスチック容器を使っていていいものか』と疑問に持つことが、産業全体にとって大きなうねりとなる」と話す。同社は、太陽光の余剰電力を出し入れできる家庭用蓄電池を製造、販売する。

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 4~6月期決算では、各社とも消費者と直結、あるいは近い国内外のビジネスが収益に貢献した(表)。伊藤忠は北米建材加工・販売、三井物産はアジア病院事業、丸紅は穀物・農業資材事業、三菱商事はサケ・マス養殖事業、住友商事はケーブルテレビ事業の好調・回復が貢献した。丸紅の柿木真澄社長は「衣食住は絶対になくならない。小さく始めた案件でも、需要をしっかりつかんだビジネスである限り、外れはない」と述べた。

 資源高で、経営体力が十分な今だからこそ、各社とも次世代事業の育成に向け事業ポートフォリオの入れ替えを急いでいる。例えば、三菱商事では垣内威彦社長の下、資産の置き換えを意識的に早めて、採算が厳しい事業は早期に売却するよう徹底してきた。垣内社長は本誌のインタビューに、「未来永劫続く事業などない。何のために投資するのか、事業の目的を達成したらその先どうするのか常に考えるべきだ」と語った。経営環境が複雑化するなか、次の時代に、業界をリードする商社はどこになるのか。

(種市房子・編集部)

(金山隆一・編集部)

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