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「魚屋さんをエンタメに?」東信水産のDX経営改革

入山章栄・早稲田大大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
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東信水産荻窪総本店の売り場=清水憲司撮影
東信水産荻窪総本店の売り場=清水憲司撮影

 入山章栄・早稲田大大学院教授の連載「未来を拓(ひら)く経営理論」は、世界の経営学の知見をビジネスパーソンが実践できる形で分かりやすく紹介していきます。今回取り上げるのは、東京・荻窪に本店を構える鮮魚店「東信水産」。DX(デジタルトランスフォーメーション)や売り場の刷新などの経営改革を進めています。改革とは縁の遠そうな魚屋さんで、どんなことが起こっているのでしょう。

入山章栄教授の「未来を拓く経営理論」

 東信水産は、JR荻窪駅北口の「荻窪タウンセブン」という大型商業施設の地下1階に本店を構え、東京を中心に首都圏の百貨店などにも出店している鮮魚店です。荻窪タウンセブンは、かつての闇市の流れをくむ地場の商業施設ですが、お肉もお魚も野菜も、とにかくおいしい。近所に住む私は「ここが日本最高のグルメストリート」とかねがね思っていました。

 そのなかでも東信水産は、品ぞろえが豊富で、陳列も美しい。

 すっかり常連になっていたところに、4代目経営者の織茂信尋(おりも・のぶつね)さん(37)が著書「魚屋は真夜中に刺身を引き始める」(ダイヤモンド社)をまとめたのをきっかけに、お話しする機会に恵まれました。

魚屋さん、八百屋さんでも経営改革はできる

 「究極の中小企業」とは何かと言えば、それは商店です。魚屋さん、八百屋さん、乾物屋さん……。日本には多くの商店がありますが、総じて改革が進んでいません。

 「今さら改革なんてできない」「このままスーパーにのみ込まれていくのだろう」と思われがちですが、全くそんなことはありません。

 そのことを示しているのが、総合商社を経て、東信水産を継いだ…

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入山章栄

早稲田大大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授

 1972年生まれ。慶応大学経済学部卒業。米ピッツバーグ大経営大学院から博士号を取得。2013年に早稲田大大学院准教授。19年から現職。世界の経営学の知見を企業経営者やビジネスパーソンが実践できる形でわかりやすく紹介している。主な著書に「世界標準の経営理論」(ダイヤモンド社)など。