身近なデータの読み方

日本の物価が安い「モノとサービス」で全然違う?

篠原拓也・ニッセイ基礎研究所主席研究員
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 日本では「デフレ脱却」が叫ばれるようになって久しい。日銀が2013年1月に2%の物価安定目標を示して以降、8年半あまりが経過したが、その達成はいまだに見通せない。日本の物価低迷は海外と比べてみても顕著で、その内容を見ると、特にサービスの物価が上がっていないことがわかる。今回は、物価上昇率についてみていこう。

物価は長期低迷

 まず、直近の消費者物価上昇率(前年同月比)を海外と比べてみる。21年7月は、日本がマイナス0.3%、米国が5.4%、英国が2.0%、ユーロ圏が2.2%(ドイツ3.8%、フランス1.2%)、中国が1.0%だ。日本の物価は、前年同月比マイナスが20年10月以降10カ月続いている。

 日本はそもそも、バブル経済崩壊から四半世紀あまり物価が上昇していない。1997年と14年は、年度初めの4月に消費税率の引き上げがあり、物価上昇率が年度平均で2%以上となるときもあったが、それ以外はおおむね横ばいで推移してきた。消費増税は19年10月にもあったが、同月の物価上昇率は2%に達しなかった。

 物価が低迷すると、消費者は「値段が上がらないので慌てて買う必要はない」といった買い控えの心理が働き、家計の消費が先送りされる。企業はモノが売れずに在庫が積み上がり、生産が停滞する。その結果、企業の業績は悪化して利益が減少するため、設備投資や従業員への賃金の支払いを抑制する。こうしてデフレスパイラルに陥って、物価はさらに低迷が続いていく。

サービスの物価が伸びない

 次に、日本と米国やユーロ圏で物価上昇率の内容を比較してみる。16~20年の年末12月の物価上昇率(前年同月比)を5年平均で…

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篠原拓也

ニッセイ基礎研究所主席研究員

1969年、東京都生まれ。早稲田大理工卒。92年、日本生命入社。2014年から現職。保険事業の経営やリスク管理の研究、保険商品の収益性やリスクの評価、社会保障制度の調査などを行う。公益社団法人日本アクチュアリー会正会員。著書に「できる人は統計思考で判断する」(三笠書房)がある。