世界銀行は9月16日、ビジネス環境の国別ランキングをまとめた年次報告書「ビジネス環境の現状(Doing Business=事業環境ランキング)」の2018年版(17年10月公表)で、中国の順位を不当に引き上げる不正があったと発表した。世界に貢献するはずの国際機関で、一体どんな不正が起きたのか。
世銀が同日公表した外部調査結果は、当時の世銀最高経営責任者(CEO)だった国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事がデータの不正操作に「直接関与し、重要な役割を果たした」と指摘した。
ゲオルギエワ専務理事はブルガリア出身の女性で、欧州中央銀行(ECB)総裁に転じたラガルド氏の後任として19年10月、IMFの専務理事に就任した。IMFの歴代専務理事は欧州出身者が就くのが慣例だが、ラガルド氏に続く女性トップとして注目された。
そんなゲオルギエワ氏に何が起きたのか。世銀は事態を重く見て報告書の廃止を決定した。ゲオルギエワ氏は国際機関トップとしての適格性が問われかねない事態となっている。
中国のランキング引き上げ工作
同報告書を巡るデータ不正は2020年に発覚し、世銀が法律事務所に調査を委託していた。調査結果によると、18年版報告書の作成を巡り、報告書案が関係者に回覧された17年5月以降、中国政府高官が世銀のジム・ヨン・キム総裁(当時)やゲオルギエワ氏らに「中国の順位が低すぎる」と不満を訴え、「中国の経済改革がよりよく反映される」よう繰り返し要求した。
中国の要求を受け、キム総裁の側近らは報告書作成チームに中国のランキングを上げるよう直接、間接の圧力をかけた。当初、作成チームは「中国のビジネス環境は…
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