産業医の現場カルテ

「復職に焦り」適応障害の男性がさらに3カ月休む理由

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
  • 文字
  • 印刷
 
 

 産業医である私は、適応障害で休職している田村さん(仮名、40代男性)から相談を受けました。田村さんは営業職で、外回りをすることが多くありました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、リモートで顧客に対応することが増える中、仕事がしにくいと感じるようになって体調を崩し、3カ月ほど前から休職していました。

復職への焦りがある一方で……

 田村さんは元来、活動的なタイプだといいます。外に出ることが好きで、コロナ禍でそれが思い通りにできずイライラしたり、つらく感じたりして仕事が手につかなくなりました。

 休職し始めた当初は、1日の大半を寝て過ごして生活のリズムを崩し、何もできませんでした。最近は睡眠時間も一定で落ち着き始めていて、朝から洗濯や掃除などの家事ができるようになっています。

 主治医にそのことを伝えたところ、復職の話になりました。ただ、田村さん自身は、体調が万全とは感じておらず、他の人の意見を聞くために私との面談を希望しました。「3カ月も休んで、早く復帰したいという焦りがありますが、すぐにフルで勤務する自信が持てません」と話しました。

職場復帰の判断は?

 厚生労働省は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を公表しています。その中で、主治医が…

この記事は有料記事です。

残り1191文字(全文1727文字)

佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。