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31歳女性「コロナで続く交代休業」会社の将来に不安

井寄奈美・特定社会保険労務士
 
 

 A子さん(31)は、従業員数約100人の衣料品製造卸会社の営業担当です。新型コロナウイルス感染拡大で取引先の店舗の売り上げが伸び悩んでいます。そのため、昨春から現在までA子さんたち従業員は会社の指示で交代で休業し、会社は雇用調整助成金を受給しています。A子さんはこの仕事が好きで続けていますが、このままでは会社が先細りになるのではないかと不安で、会社の方針にも疑問を抱いています。

続く交代休業に疑問

 A子さんたちの休業は、昨年の緊急事態宣言中は月6~8日程度でしたが、今は月2~3日です。A子さんの給与は本来、月約28万円です。出勤日は平均すると月21.5日で、1日当たりの給与は約1万3000円です。休業日は1日当たりの給与額の70%が支払われるので、約9100円になります。

 また、取引先の売り場を支援するための休日出勤がコロナ禍でなくなり、ボーナスの支給はありましたが、その額は大きく下がりました。この2年間は昇給もありません。そのため、年収は15%ほど下がりました。

 会社は、従業員を休業させることで、雇用調整助成金を受給しています。しかし、大規模商業施設への休業要請があった昨年とは違い、今年は売り上げが伸び悩んでいるものの取引先の店舗は営業しています。A子さんは、出勤日数が減って担当の取引先への対応が十分にできていないと感じています。

 会社では、退職する従業員が相次いでいますが、人員を補充する様子はありません。そのため、従業員1人がこなすべき業務量は増えています。9月中に緊急事態宣言が解除され、A子さんは積極的に取引先から要望を聞いて、来シーズンの提案をしたいのですが、目の前の仕事をこなすことで精いっぱいです。

 会社の業績が思わしくないのは、A子さんも理解しているつもりです。しかし、交代で休業を続けることで、次につながる仕事の準備ができないことに疑問を感じています。それを上司に伝えて…

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特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/