イマドキ若者観察

現状に不満それとも満足?若者が選挙に行かない理由

藤田結子・明治大商学部教授
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選挙で若者の投票率は低いと言われるが
選挙で若者の投票率は低いと言われるが

 10月31日に衆議院選挙の投開票が行われます。選挙のたびになぜ若者の投票率が低いのか話題になります。しかし「若者」といっても、10代後半から20代の意識や生活は多様です。今回は選挙に行かない理由について、若者に話を聞きました。

生活に不満でも投票には行かない

 「今の生活はまったく満足していない。お給料もそうだし。仕事ばっかりだから、全然楽しくない。何のために生きているんだろうって思っちゃう」

 優花さん(20歳、以下すべて仮名)は大学へ進学せず首都圏で働いています。週6日、朝早くから夜遅くまで長時間労働をしていますが、投票が現状を変える手段だとは思えません。

 「興味がないし、どの人がどうとか調べたこともない。議員さんにいいイメージはない。テレビで国会が映ってて、その時に居眠りしてたり。選挙に行っても、自分の生活は変わらないと思う」

 高校卒業後、地方で製造の仕事に関わる美咲さん(20歳)も、残業で1日12時間働くことがあります。「中高の時の友だちと政治の話をしたことは一度もない。あったら怖い(笑い)。(政治の話をするのは)大人やな。テレビでニュースも見ない。投票しても自分たちの意見が伝わるわけない」と話しました。

 他の世代に比べ若者の投票率が低いのは以前からですが、1980年代と比べて、今は20代の投票率が半分近くに減っています。大阪大学・吉川徹教授の研究によると、特に非大卒層の若者が、投票や政治に対して消極的だといいます。「若者の政治離れ」は中学校・高校卒などの非大卒層でとりわけ顕著です(明るい選挙推進協会の情報誌「Voters」No.53、2019年12月)。

 大卒層の若者は男女ともに、他の世代と比べても標準的な政治的積極性があると吉川教授は指摘します。

 非大卒層は不安定な雇用など、不利な生活条件下に置かれやすいといえます。長時間労働であれば、生活にゆとりがなく、選挙について情報を得たり、投票に行ったりすることも難しいでしょう。日本経済が停滞する中、「自己責任」「親ガチャ」といった言説が広まり、選挙で社会が変わるという「政治的効力感」も持ちにくいようです。

大学進学する層は「現状に満足」も

 大学生に聞き取りをしたところ…

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藤田結子

明治大商学部教授

東京都生まれ。慶応義塾大を卒業後、大学院留学のためアメリカとイギリスに約10年間滞在。06年に英ロンドン大学で博士号を取得。11年から明治大学商学部准教授、16年10月から現職。専門は社会学。参与観察やインタビューを行う「エスノグラフィー」という手法で、日本や海外の文化、メディア、若者、消費、ジェンダー分野のフィールド調査をしている。