産業医の現場カルテ

睡眠不足は「酔っ払い状態」30代男性がミス増加で困惑

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 土田さん(仮名、30代男性)は、ある会社の経理担当です。産業医である私は、土田さんから「疲れがとれにくく、仕事中にミスをしてしまうことがあり、困っている」と相談を受けました。相談を受けたのは、ちょうど会社の決算の時期でした。

残業が続くと……

 決算期は業務が多忙になります。土田さんは「ここ1カ月ほどは毎日のように数時間の残業をしています」といいます。通勤時間が片道1時間半ほどかかり、帰宅が午前0時前になることがたびたびありました。朝は午前9時の始業に合わせて出勤します。

 そのため、睡眠時間が必然的に短くなっていました。「同僚に仕事のチェックを受けるときに、考えられないようなミスを指摘されることがありました。情けないと思い、落ち込みます。遅く帰宅した翌日は集中力に欠け、仕事の進み具合も遅いと感じています」と話します。

 また、土田さんは眠りにつくのを難しく感じたり、朝早く目覚めてしまったりすることがありました。昼間に眠気を感じることがあるため、昼以降に眠気覚ましとしてコーヒーや緑茶を飲むことが多くあります。さらに、就寝前の飲酒が習慣になっていました。

慢性的な睡眠不足の人が少なくない

 睡眠は脳や体の疲労回復や記憶の整理、ストレスを軽減する役割があります。睡眠が安定しないと、認知機能の低下やメンタル不調に至るケースもあります。

 私は、土田さんの睡眠時間が短くなっているだけでなく、睡…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。