経済プレミアインタビュー

SDGsは「ただの広告」?企業の“粉飾”という大問題

清水憲司・毎日新聞経済部副部長(前ワシントン特派員)
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同志社大大学院の須貝フィリップ教授=日の出ビジュアルズ提供
同志社大大学院の須貝フィリップ教授=日の出ビジュアルズ提供

 このままでは単なる企業の「広告」に終わってしまうのではないか。近年、国連の持続可能な開発目標(SDGs)や環境・社会・企業統治(ESG)投資を掲げる企業や金融機関が世界中で増えている中で、同志社大大学院の須貝フィリップ教授(マーケティング学)はこう警鐘を鳴らす。企業による地球温暖化への対応や従業員の待遇改善が注目されるのは喜ばしい動きのはずなのに、どこに問題があるのか。2回にわたり須貝教授に聞く。【聞き手・清水憲司/経済部】

同志社大大学院・須貝フィリップ教授に聞く(上)

 ――近年、SDGsやESG投資が脚光を浴び、「企業が世の中で果たすべき役割」が問い直されています。

 ◆須貝さん 企業の「価値」を金銭で評価するだけでは、非常に重要なことが忘れられてしまうという認識が広がってきています。アリストテレス、アダム・スミスや多くの哲学者、経済学者によれば、価値には2種類のものが存在すると指摘されています。

 売買する際の価値を示す「交換価値」と、モノやサービスを利用する際に得られる「利用価値」(「生活価値」)です。交換価値は、貨幣によって数量化でき、計算が容易ですから、金融や経済の計算基準となっています。一方、利用価値は消費者の満足度、幸福感、健康や福祉といった無形のものを扱うため、金銭で評価することは困難です。

 企業の営みが「従業員にもたらす価値」や「社会にもたらす価値」は、利用価値に属します。金銭で評価することが難しいため、企業の価値を考察する場合、副次的な存在に位置づけられてきました。

 それゆえ、SDGsの存在は重要です。SDGsは、最近まで企業の営みを評価する上で不可欠と思われてこなかった「貧困や飢餓を無くす」といった目標を与えてくれるからです。

まだ不十分な「株主優先」からの転換

 ――最近まで、なぜ企業はこれらの問題を軽視してきたのでしょうか。

 ◆これらの問題を軽視してきたのかどうかは、定かではありませんが、多くの企業は株主を(自然環境や従業員といった)その他のステークホルダー(利害関係者)より優先してきました。その大きな原因は、米国の経済学者ミルトン・フリードマンやその他の…

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清水憲司

毎日新聞経済部副部長(前ワシントン特派員)

 1975年、宮城県生まれ。高校時代まで長野県で過ごし、東京大学文学部を卒業後、99年毎日新聞社に入社。前橋支局を経て、東京経済部で流通・商社、金融庁、財務省、日銀、エネルギー・東京電力などを担当した。2014~18年には北米総局(ワシントン)で、米国経済や企業動向のほか、通商問題などオバマ、トランプ両政権の経済政策を取材した。