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左官職人じゃない異色社長が挑んだ「若手育成改革」

清水憲司・毎日新聞経済部副部長(前ワシントン特派員)
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小石を埋め込んだ玄関ポーチを仕上げる職人たち=原田左官工業所提供
小石を埋め込んだ玄関ポーチを仕上げる職人たち=原田左官工業所提供

 東京都文京区の「原田左官工業所」の3代目経営者、原田宗亮(むねあき)さん(47)は建築市場の縮小が進む中、デザイン性が高く左官職人の腕をいかせる「店舗左官」に活路を見いだします。残された課題は、今の時代に合った職人の育成。昔ながらの「見て覚えろ」式を脱却し、モデリングと呼ばれる手法で若手職人の育成に乗り出しました。目指すのは、職人が輝き続けられる会社作りです。

私の家業ストーリー<3>原田左官・原田宗亮さん

 左官職人の育成は2007年に社長になった頃から、ずっと悩みの種だった。全盛期には全国で30万人を数えた左官職人は、現在では6万人前後に減ったとされる。

 建築市場の縮小や安価なビニール製壁材の普及に加え、「技術は見て覚えろ」式の育成法に若者が付いてこられないことも大きい。若手職人が育たないから、平均年齢60歳超と言われる左官職人の高齢化がますます進むという悪循環に陥っている。

 原田左官でも、かつては毎年2~3月になると、高校の先生が生徒数人を連れて来るのが通例になっていた。「雇ってください」と頼まれ、その場で採用を決めた。慢性的な人手不足だったから助かったが、本人たちは左官職人になりたいというより、その時期まで就職が決まらず、なんとなく先生に連れて来られるケースが多かった。だから半分近くの若者がやがて離職していった。

 一方、原田左官は先代の父宗彦さんが経営していた頃から、女性職人の育成に力を入れてきた。壁を一気に塗りあげる体力が必要で、長く「男の職場」と思われてきた世界だが、女性の左官職人が現場に出ると、デザイン性や繊細さ、綿密さといった女性ならではの良さが発揮されることに目をみはった。

 「原田左官は女性でも職人になれる」と聞きつけ、造園や出版、製造業など、全く異なる業界…

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清水憲司

毎日新聞経済部副部長(前ワシントン特派員)

 1975年、宮城県生まれ。高校時代まで長野県で過ごし、東京大学文学部を卒業後、99年毎日新聞社に入社。前橋支局を経て、東京経済部で流通・商社、金融庁、財務省、日銀、エネルギー・東京電力などを担当した。2014~18年には北米総局(ワシントン)で、米国経済や企業動向のほか、通商問題などオバマ、トランプ両政権の経済政策を取材した。