ベストセラーを歩く

村上春樹の魅力を“早大キャンパスの聖地”で考えた

今沢真・経済プレミア編集長
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村上春樹の魅力を語り合う十重田裕一さん(右)と重里徹也さん=村上春樹ライブラリーで2021年10月5日撮影
村上春樹の魅力を語り合う十重田裕一さん(右)と重里徹也さん=村上春樹ライブラリーで2021年10月5日撮影

村上春樹ライブラリーを訪ねる(2)

 早稲田大学キャンパス内(東京都新宿区)に「村上春樹ライブラリー」が10月1日に開館した。館長を務める十重田裕一(とえだ・ひろかず)早大教授と、「ベストセラーを歩く」の筆者、重里徹也・聖徳大教授の2人が村上作品の魅力をめぐって対談した。2回に分けて掲載する。【司会は経済プレミア編集部・今沢真、写真も】

 ――大学のキャンパスで村上作品の原点にふれる場ができました。学生や入館される皆さんに何を感じとってほしいですか。

 ◆十重田裕一さん 村上春樹さんの魅力を全身で感じとってもらえるといいなと思います。春樹さんの書物をすべてそろえていますが、本人に寄託、寄贈いただいたレコードがたくさんあります。音で春樹さんを感じてもらうことができます。

 使っていたテーブルやイス、春樹さんのジャズ喫茶にあったピアノもあります。いろいろなものを通じて春樹さんを感じてもらい、新しい表現につなげてもらえればと思います。春樹さんは文学だけではなくて幅広い読者層をお持ちです。学生たちに多様な魅力に触れてもらえるとうれしいです。

本人とふれ合う機会も

 ――活字以外のものに触れることで、村上春樹の読者には何か違った働きかけがあるのでしょうか。

 ◆重里徹也さん 作家が確かに存在していることを実感でき、生きている人間としてふれられるということだと思います。近くに夏目漱石の記念館(漱石山房<さんぼう>記念館=新宿区早稲田南町)があります。漱石が暮らしていた場所に記念館が建っていて、書斎も再現されています。そこを訪れると、漱石はこの町に住んでいたことが実感できます。

 それと同じです。このライブラリーにくると、村上さんは足かけ8年この大学に通ったんだ、ここがその当時どんなだったのだろうか、「ノルウェイの森」でどう書かれているだろうかと、文学作品を複合的に味わって楽しめます。

 私は学生に「手で本にふれることも貴重なことなんだ。読めないと思ってもさわってなでる、それも読むうちなんだ」とよく言います。全身で作品と関わることが大事で、その一つとして作家ゆかりの場所を訪ねるのは有効な方法だと思います。ここが村上春樹の読者にとって非常にありがたい場所、聖地になるのではないでしょうか。

 ――この場で村上春樹本人にふれる機会もあるようですね。

 ◆十重田さん 朗読会が何度か予定されていて、本人に接する機会があると思います。小川洋子さんや朝井リョウさん、川上弘美さんといった作家の方々が登場するイベントも予定しています。「生身の作家に出会える機会を」と春樹さんが考えてくださいました。

 春樹さんはここを開かれた文化交流の場にしていきたいということで、朗読会や音楽を紹介する会といったさまざまなプロジェクトを展開していきたいと考えています。

村上春樹の魅力とは

 ――原点をうかがいますが、村上春…

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今沢真

経済プレミア編集長

1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀・財研キャップ、副部長を経て論説委員(財政担当)。15年経済プレミア創刊編集長。19年から同編集部。22年4月に再び編集長に。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」など。16~18年度城西大非常勤講師。