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「お前には継がせない」が育んだ”住宅建材のユニクロ”

入山章栄・早稲田大大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
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サンワカンパニーの山根太郎社長=同社提供
サンワカンパニーの山根太郎社長=同社提供

 入山章栄・早稲田大大学院教授の連載「未来を拓(ひら)く経営理論」は、世界の経営学の知見をビジネスパーソンが実践できる形で分かりやすく紹介していきます。今回は「住宅建材界のユニクロ」と呼ばれるサンワカンパニー(大阪市)を取り上げます。社長の山根太郎さん(38)は、創業者の父親から「お前には会社を継がせない」と言われ、総合商社に入社。その後、父の急死に伴って後を継ぐことになりました。継ぐつもりのなかった後継ぎが第二創業を成し遂げる。山根さんの歩みには「うまくいく事業承継」のエッセンスが詰まっています。

入山章栄の「未来を拓く経営理論」

 サンワカンパニーは、住宅建材業界では例を見ないSPAというビジネスモデルの会社です。SPAとは、製品の企画・開発から販売までを垂直統合的に、自社で取り仕切る手法で、自らは生産工場を持たないケースも少なくありません。

 SPAの会社としては、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングがよく知られています。アパレル業界はサプライチェーンが複雑で非効率だったがゆえ、SPAの手法は大きなインパクトをもたらしました。住宅建材業界も同様の複雑さ、非効率さがあり、そこに革新を持ち込んだのが、サンワカンパニーです。

 山根さんについて興味深いのは、19歳の時に偶然知るまで、父幸治さんが社長であることさえ知らなかった点です。幸治さんは「後継ぎ」を意識させるのではなく、「一国一城のあるじになれ」とむしろ起業を促していました。そうした教育方針の下、山根さんはプロテニスプレーヤーを目指し、大学時代は海外ツアーに飛び回る…

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入山章栄

早稲田大大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授

 1972年生まれ。慶応大学経済学部卒業。米ピッツバーグ大経営大学院から博士号を取得。2013年に早稲田大大学院准教授。19年から現職。世界の経営学の知見を企業経営者やビジネスパーソンが実践できる形でわかりやすく紹介している。主な著書に「世界標準の経営理論」(ダイヤモンド社)など。