ニッポン金融ウラの裏

コロナ支援のゼロゼロ融資「もう完済した事業者が!?」

浪川攻・金融ジャーナリスト
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緊急事態宣言が解除されて迎えた初の週末、多くの人でにぎわう道頓堀。飲食街にも客足は徐々に戻ってくると思われるが…=大阪市中央区で2021年10月2日午後3時45分、木葉健二撮影
緊急事態宣言が解除されて迎えた初の週末、多くの人でにぎわう道頓堀。飲食街にも客足は徐々に戻ってくると思われるが…=大阪市中央区で2021年10月2日午後3時45分、木葉健二撮影

 新型コロナウイルス問題の支援策として実施した民間金融機関の金融支援が曲がり角にさしかかっている。実質無利子・無担保の融資、いわゆる「ゼロゼロ融資」だ。感染者数が減り、経済活動が再開するなかで、一部融資の返済が始まっているからだ。

 ゼロゼロ融資は政府が中小・零細事業者向けに制度を作り、2020年5月からスタートし、実行ベースで21年5月末に終了している。その間、地銀や信用金庫、信用組合など主に地域に根ざした金融機関を通じて35兆円を超える融資が行われた。

 政府が利子を補塡(ほてん)し、信用保証協会が保証を付けるため、民間金融機関は焦げ付きのリスクが回避される。政府が事業者支援を強く求め、金融機関は積極的に融資した。

 融資後、最長5年間据え置き期間が設けられている。その間は返済が猶予され、その後返済が始まる。ただ、全案件のうち半分強が1年後に返済を開始する条件になっているようだ。コロナ問題がこれほど長期化するとは想定しなかったためだ。

 ある関東圏の地銀は「案件の半分は1年据え置きで、すでに返済が始まっている」という。2年後に返済開始の融資案件が多い別の中堅地銀の幹部は「来年春以降、返済開始が一挙に広がる」と言う。

預金を解約して返済

 そうしたなか、九州のある第二地銀のトップは「ゼロゼロ融資を完済した事業者がいる」と話す。予備的に融資を受けていた一部事業者とみられる。「コロナの影響がそれほどなく、使わなかったようだ」というのだ。さらに、「そうした事業者は、預金を解約して返済している」という。関西地方の別の地銀の幹部も、預金を取り崩して完済した事業者がいると説明する。

 ただし、その動きは少数のようだ。飲食業や宿泊業、観光業の事業者の多くはコロナの影響が大きく、借り入れを日々の資金繰りに充てており、余裕はないとみられる。東京都内のある信用組合の幹部は、「うちはゼロゼロ融資を完済した事業者はいない」と話す。この信用組合は当初から据え置き期間を3~5年に設定しているためで、前倒し返済もないという。

 経済活動が再開したとはいえ、飲食街にコロナ前の客数は戻っていない。運転資金の余裕が…

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。