熊野英生の「けいざい新発見」

1バレル=85ドルの原油高は「石油ショック」なのか?

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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第1次石油危機時、店員を押しのけて買い物をする人々=東京都港区のスーパー・青山ピーコックで1973年11月21日
第1次石油危機時、店員を押しのけて買い物をする人々=東京都港区のスーパー・青山ピーコックで1973年11月21日

 ニューヨークの原油先物価格が急上昇し、指標の米国産標準油種(WTI)が10月に1バレル=85ドル台をつけた。あるテレビ局の取材で、「これは第3次オイルショックと言ってもよいのか」とコメントを求められた。唐突だったので驚いたが、一度考えてみる必要があると思った。そこで、本稿では、今の原油高が日本経済にとってどれほど深刻なのかを整理してみよう。

冬場の生活コストが高くなる

 今回の原油高は、昨年大幅に下がった反動の面がある。昨年春、「原油価格が一時マイナスになった」という報道を記憶している人は多いと思う。2020年4月20日のWTI先物価格が1バレル=マイナス40.32ドルになった“事件”である。それは一時的だったが、コロナ禍が起きたころに1バレル=30ドル以下まで価格が下落した。それに比べると今は2倍以上の高値だ。

 ただし2年前の19年10月は50ドル台、3年前の18年10月は70ドル台だった。それを考えると、そこまで急騰ではない。

 一方、外国為替相場が1ドル=114円前後まで円安に動き、原油の輸入価格を押し上げている。1年前は1ドル=105円前後だった。114円で計算すると、円安要因だけで輸入価格が8.6%上がったことになる。市況の変化に対し日本への原油の入着は約1カ月遅れる。石油製品は11月から私たちの生活コストを押し上げるだろう。

輸入額の増加

 原油価格の上昇を「量」で測ってみたい。貿易統計の輸入品目のうち、鉱物性燃料が石油・LNG、石炭などエネルギーに該当する。19年の鉱物性燃料の輸入額は16.6兆円だった。20年は原油下落もあって10.6兆円と約6兆円も減少した。このときは、コロナ禍による景気悪化を原油安が助ける働きをした。

 21年10~12月に、1バレル=85ドル、1ドル=114円が続くと仮定すると、鉱物性燃料の輸入額は19.3兆円になると試算できる。19年と…

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熊野英生

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。