職場のトラブルどう防ぐ?

52歳出向組「戻る部署がありません」人事部通告の衝撃

井寄奈美・特定社会保険労務士
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 A男さん(52)は、飲食関連のテナント運営をする子会社に出向して10年になります。当初、出向は2年程度と言われていましたが、なかなか戻ることができませんでした。そうした中、本来の籍がある親会社の人事部から突然呼び出しがありました。「やっと戻れる」とホッとしたものの、いまさら会社に居場所があるのか不安な気持ちも持ちつつ面談に臨むと、思ってもみなかった提案を受け、悩んでいます。

示された二つの選択肢

 本社の人事部の話は次のようなものでした。

 新型コロナウイルス感染拡大でA男さんがいる子会社は収益が大きく悪化し、経営の立て直しが急務になっています。その一環として出向者を親会社に戻したいという話が出ていました。

 コロナ禍の影響を受けているのは親会社も同じです。そのため、A男さんが親会社に戻っても「配属できる部署がありません」と言われました。

 他の子会社か関連会社に再出向という選択肢がありますが、50歳以上の場合は親会社のルールで「転籍」となります。その場合、いったん親会社を退職して子会社などと直接労働契約を結ぶことになるため、給与や勤務地、労働時間などの労働条件が変わります。年収は下がる可能性が高いということでした。

 A男さんにとっては寝耳に水でした。返答できずにいると、人事担当者から「ご自身のこれまでのキャリアを棚卸しして、自分自身で新しい進路を切り開いていくという考えがあれば、いったんこちらに戻り、セカンドキャリア支援制度を利用できますが、いかがですか?」と言われました。

 セカンドキャリア支援制度は、社外での再就職や独立・自営を目指す従業員をサポートするために、親会社が7年ほど…

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井寄奈美

特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/