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生涯所得に数億円の差 大学は戦略的に選ぶ時代に

石角友愛・パロアルトインサイトCEO/ AIビジネスデザイナー
米国では大学の学費の高騰が社会問題になっている
米国では大学の学費の高騰が社会問題になっている

 先日、米国人の知人から相談を受けた。大学3年生のご子息がやる気をなくしているという。大学に入学して半年ほどで、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のため休校になった。大学2年生の1年間は全てオンラインで授業を受け、今年の9月から再び学校が開講してキャンパスに戻ったものの、調子が出ないのだという。

 就職活動を控え、将来のことも考えなければいけない中、どのように自信を取り戻せばよいか悩んでいるということだった。また、別の知人からは、ご令嬢が4年制の有名私立大学を数学専攻で卒業したにもかかわらず、パンデミックで就職先が決まらずに困っていると相談を受けた。

学費は高騰

 パンデミックで大学教育のあり方が問われ始めているのは事実だ。大学ランキングを発表している米誌USニューズ・アンド・ワールド・リポートによると、米国の私立大学の場合、平均的な学費は年間3万8000ドル(約430万円)と言われており、ほとんどの学生が学生ローンを組んで通っている。

 学生ローンの焦げ付きは社会問題にもなっている。また、州立大学の学費も年々高騰しており、州の出身者は年間1万ドル、州外から進学の場合は年間2万3000ドルだ。

 学費高騰の背景には、大学側がランクを意識してスポーツ設備などを拡充していること、世界中の優秀な学生に志願してもらうための広報や試験などの費用増加、大学運営に関わる事務員らの人件費増加、州政府からの補助金減額、学費援助の種類が広がったこと――などが挙げられ、多面的な問題になっている。

大学の費用対効果

 高騰する学費に対して、それに見合ったリターンが果たしてあるのだろうか。そう考える米国人が増えている。

 例えば私が最近、知り合った技術者たちの中には、大学を中退している人も少なくない。…

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パロアルトインサイトCEO/ AIビジネスデザイナー

 2010年にハーバードビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得後、米グーグル本社でシニアストラテジストとして、多数のAIプロジェクトを手がける。グーグル退社後、人事系スタートアップや流通系AIベンチャーを経て、2017年に日本企業にAI開発を行うパロアルトインサイトを起業。著書に「いまこそ知りたいDX戦略」「いまこそ知りたいAIビジネス」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。パロアルトインサイトHP