
入山章栄・早稲田大大学院教授の連載「未来を拓(ひら)く経営理論」は、世界の経営学の知見をビジネスパーソンが実践できる形で分かりやすく紹介していきます。前回(「お前には継がせない」が育んだ”住宅建材のユニクロ”参照)に続き、サンワカンパニー(大阪市)を取り上げます。創業者だった父親の急死に伴い、総合商社を辞めて社長に就任した山根太郎さん(38)は、会社の変革に乗り出します。創業者の死で混乱する会社。山根さんはどこから手を付けたのでしょう。
入山章栄教授の「未来を拓く経営理論」
父幸治さんから「お前には会社を継がせない」と言われ、伊藤忠商事に入社した山根太郎さん。いつかは独立、起業して父親が経営するサンワカンパニーをのみ込むくらいの気概でいました。ところが、幸治さんが59歳の若さで急死したことを受けて、社長に就任した山根さんはまず、社員たちにある選択を迫ります。
「今うちの会社は弱小校だが、これからは甲子園を目指すつもりです。その気がない人は、今すぐ船を下りてほしい」。山根さんは簿記3級と英語試験のTOEICで670点以上を取れない社員は昇進させないという方針も打ち出しました。
家業経営では、創業者や先代経営者によるワンマン経営だったがゆえ、ガバナンス(企業統治)や人材育成といった組織をうまく回す仕組みが整っておらず、多くの社員がイエスマンになってしまう。こうしたことがよく起こります。
先代の時はそれで会社が回っていても、組織としての力が発揮できないので、先代がいなくなると途端に成長が止まってしまうことが多い。そうした仕組みがボロボロの状態で会社を継ぐのに加え、後継ぎに対しては「会社のことを何も分かっていないくせに」と反感も集ま…
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