産業医の現場カルテ

「荷物が持てない」50代配達員を苦しめる“胸の痛み”

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 富田さん(仮名、50代女性)は運送会社で配達員を務めています。数カ月前、胸部に帯状疱疹(ほうしん)を発症し、薬物治療を受けました。産業医である私は、富田さんから「症状の一つである水ぶくれは改善したものの、ピリピリした痛みが残っていて仕事に支障が出ています」と相談を受けました。

痛みが残る

 富田さんは主に小荷物の配達に従事しています。胸部に帯状疱疹の症状が出て以降、痛みが続いています。荷物を抱えると痛みを感じて、荷物を落としそうになったりすることがあり、仕事をするのに不安を感じていました。

 帯状疱疹は50歳以上の人が発症することが多い疾患です。加齢とともに発症率が増加し、日本人は80歳までに約3人に1人が発症すると言われます。主に幼児期に水痘(水ぼうそう)にかかった後、脊髄(せきずい)から出ている神経節という部分に潜伏する水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することで発症します。胸や背中に、帯状に水ぶくれ(水疱)や痛みが出ることが多いため、「帯状疱疹」と呼ばれます。

 富田さんは、当初、チクチクとした神経痛のような痛みを胸に感じ、気づくと水ぶくれができていました。慌てて病院を受診すると、主治医が帯状疱疹と診断し、内服薬を出してもらいました。その薬で水ぶくれの症状は治まったのですが、痛みが残っています。その後は仕事が忙しく、通院ができていない状況でした。

帯状疱疹後神経痛とは

 私は富田さんの症状が「帯状疱疹後神経痛」だと考え…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。