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「たびたび休職」28歳男性が受ける傷病手当金の新ルール

井寄奈美・特定社会保険労務士
 
 

 A介さん(28)は、あるメーカーの研究職です。もともと人付き合いが苦手で、仕事の進め方に苦労を感じていました。そうした中、風邪をこじらせたことをきっかけに気落ちし、抑うつ状態と診断されて2~4カ月の休みを繰り返すようになってしまいました。休む際は、会社の休職制度と傷病手当金を利用していますが、今後が不安です。

休職を繰り返す

 職場は、A介さんが通った大学院のゼミの教授の紹介で決まりました。ゼミで仲のよかった先輩がいたので安心して就職しましたが、まもなく先輩が別の研究所へ異動し、仕事を教わったり、相談したりする人がいなくなりました。

 研究所では同僚と共同で作業をすることが少なくありません。調整が苦手なA介さんは、作業の進め方や考え方が同僚と異なることが多々あり、ストレスを感じるようになりました。また、定期的にある上司との面談で、想像していたよりもずっと低い評価を受けていることがわかりました。

 そうした中、A介さんは風邪をこじらせて数日間、会社を休むことになりました。それ以降、A介さんは気持ちがふさぎ込むようになって会社に行けなくなり、1カ月ほど休職しました。病院で抑うつ状態と診断され、それ以降も数カ月ごとに休職を繰り返すようになっています。

 最初に休んだときは、年次有給休暇を利用し、給料は満額受けられました。その後、有休がなくなってからは、会社が設けている無給の休職制度を使っています。そのため、健康保険制度の傷病手当金を受給しています。

病気で休むときの会社の制度

 会社で働く人が病気になった場合に使うことができる制度を確認します。事例のA介さんのケースは、労災保険の対象となる病気(業務や通勤が原因の病気)ではないことを前提とします。

 まず会社の制度です…

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特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/