熊野英生の「けいざい新発見」

岸田首相へ「10万円給付より賃上げの方が重要だ」

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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大型経済対策の効果は……(臨時閣議に臨む岸田文雄首相)=首相官邸で2021年11月19日、竹内幹撮影
大型経済対策の効果は……(臨時閣議に臨む岸田文雄首相)=首相官邸で2021年11月19日、竹内幹撮影

 岸田文雄首相の経済対策の中には、納得がいかないものがある。それは、18歳以下の子供に1人10万円相当の給付を行う政策だ。

 子供に配るといっても、実際は子供がいる親に給付する。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、子育て世帯は2019年6月時点で1122万世帯ある。所得制限によって上位1割の世帯が給付されないとしても、約1000万世帯に計1.9兆円程度の給付金を渡すことになる。

子育て世帯の所得は高い

 しかし、その効果はどれほどあるのだろうか。子供1人10万円を1回もらったとしても、子育ての負担感が和らぐことはないだろう。政府には子育て世帯の経済的負担を軽くしたい狙いがあるだろうが、その目的はほとんど達成されない。

 子育て世帯の多くは、計画的に教育資金などを積み立て、将来の支出に備えようとしている。だから、突然10万円を受け取ってもすぐには使わず、将来の備えとして貯蓄しておこうと考えるだろう。消費刺激効果は乏しい。

 子育て世帯は実は平均世帯所得が高い。国民生活基礎調査では、18年の平均は745.9万円となっている。全世帯の平均552.3万円より35%も高いのだ。

 よく考えてほしいのは…

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熊野英生

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。