ベストセラーを歩く

直木賞作家・西加奈子「夜が明ける」は若者への応援歌

重里徹也・文芸評論家、聖徳大教授
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直木賞受賞時の西加奈子さん=東京都千代田区で2015年1月15日、梅村直承撮影
直木賞受賞時の西加奈子さん=東京都千代田区で2015年1月15日、梅村直承撮影

 若者たちの貧困や子どもたちの窮状はしばしば報道されている。日本は一体、いつの間にこんな国になってしまったのだろうか。力量のある作家の中にはそんなあり様を見て、小説の中で問おうとする人がいるに違いないと思っていた。

 西加奈子の5年ぶりの長編小説「夜が明ける」(新潮社)を読んで、ここに貴重な試みがあるのを思った。貧困やハラスメント、過重労働やマスメディアの腐敗など、今の日本が直面している問題がリアルに描かれている。そして、そんな中で何とか生きていこうとする主人公たちの姿がつづられていく。

「サラバ!」で直木賞受賞

 西は1977年、イランのテヘラン生まれ。大阪で育った。関西大卒業後、情報誌の記者などを経て、2004年に小説家デビュー。15年には「サラバ!」で直木賞を受賞。人気作家の一人で、私の勤めている大学にも愛読している女子学生がいる。

 「夜が明ける」は高校の同級生だった男性2人の友情を描いた小説だ。語り手である主人公の「俺」と、身長が190センチ以上あり、吃音(きつおん)のある「アキ」。この2人…

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重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。