職場のトラブルどう防ぐ?

希望退職選んだ56歳男性が悩む「健康保険」の新ルール

井寄奈美・特定社会保険労務士
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 会社員のA郎さん(56)は、会社の希望退職の募集に応じることにしました。自宅の近くで1人暮らしをする母親(83)が体調を崩し、介護が必要になったからです。今年末に退職しますが、健康保険のことが気になっています。

 転職先はまだ決まっていません。母親の状態を見ながら仕事を探す予定です。退職後に健康保険をどうすべきか迷っています。これまで専業主婦の妻に母親の介護を任せていましたが、介護疲れで体調を崩して通院しています。会社で加入している健康保険組合で任意継続ができると聞いていますが、制度が変更になるという話も耳にしています。A郎さんは年収950万円で、子供はいません。

退職後の健康保険

 退職後の健康保険について説明します。日本は「国民皆保険制度」で、会社員は退職後もなんらかの健康保険制度に加入する必要があります。選択肢は大きく三つあります。

 一つ目は、会社員のときに加入していた健康保険制度(健康保険組合か協会けんぽ)に引き続き加入する「任意継続」です。退職時からさかのぼって2カ月以上の健康保険の被保険者期間があることが条件で、加入するには退職日の翌日から20日以内に自分で健康保険組合に申し出ます。加入できる期間は最長2年です。

 二つ目は、市区町村役場が窓口の国民健康保険(国保)に加入することです。国保は退職日の翌日から14日以内に手続きをします。

 三つ目は、会社員の家族が加入している健康保険制度の扶養家族に入ることです。この場合、収入の条件があります。退職後に月10.8万円以上(年130万円以上となる見込み)の収入があると扶養家族になりません。収入には傷病手当金、失業給付(失業保険)など非課税の所得も含まれます。扶養する人と別居している場合は、一定額以上の仕送りを受けていることが条件です。

 A郎さんには、社会保険に加入している家族がいません。そのため、ここでは任意継続と国保で保険料を比較してみます。

保険料の負担…

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井寄奈美

特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/