産業医の現場カルテ

感染が小康状態の今「会社はBCPにパンデミック対応を」

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 産業医である私は先日、従業員数約300人のITシステム開発会社の総務部長、中野さん(仮名、50代男性)と面談をしました。従業員が健康で安全に働ける場を作るための「産業保健」についてやりとりする中で、話題は新型コロナウイルスへの対応の振り返りになっていきました。面談は今夏の感染第5波が落ち着いたタイミングでしたが、その今だからこそ、改めて会社として感染症への対応策をまとめるよう伝えました。

いち早く在宅勤務を導入したが

 中野さんの会社は昨春の感染拡大時に、いち早くテレワーク(在宅勤務)ができる環境を整え、最初の緊急事態宣言中はほぼ全従業員が在宅勤務をしました。その後は、感染の状況を見ながら出社する人数を制限したり、社内の感染対策を徹底したりしています。

 幸い、これまで従業員に感染者は出ていません。しかし、従業員の家族で感染が疑われるケースが出て、その従業員が一時的に業務を離れたことで所属するチームが少し混乱することがありました。

 また、営業部では対面の業務を制限したことから、業務の進捗(しんちょく)に遅れが出るケースがたびたびありました。営業部員の中からは「在宅勤務がやりにくい」という声も出ていました。中野さんは「業務を進める上で問題の芽があることはわかっていましたが、日々の対応に精いっぱいで、根本的な解決ができていませんでした」と振り返りました。

対応を振り返って対策を

 自然災害や大火災などの発生時に会社が事業を続けていくための対応をまとめた事業継続計画(BCP)を作成している企業は多くあります。しかし、新型コロナの感染拡大が起きる…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。