
星野リゾートは、北米に温泉旅館をつくる計画を進めています。「世界で通用するホテル運営会社を目指す」というビジョンの下、それを可能にする人材と財務の基盤を整え、いよいよ競争の激しい北米市場への進出に踏み切ろうとしています。星野佳路代表にとっては30年以上も前から温めてきた構想ですが、なぜ北米に温泉旅館なのでしょうか。背景には、1980年代のバブル期に北米進出を果たした日本のホテル会社が、ことごとく撤退を迫られた苦い歴史があります。
星野佳路の家業のメソッド
北米は80年代に、さまざまな日本のホテル会社が進出し、その後、撤退を余儀なくされた市場です。日本のホテル業界にとって、どうしても越えなくてはならない山であり、克服しなければならないマーケットだと考えてきました。
星野リゾートにとっても、世界的なホテル会社が集積し、旅行産業の情報発信基地でもある北米市場で通用することは、「世界で通用するホテル運営会社」になるために必ず必要なことです。
これまで星野リゾートは、国内で人材と財務の基盤を固めてきました。こうして星野リゾートが得たのは、北米への挑戦権であり、日本代表の一員として、必ずや北米に進出して力を試してみたいと思います。
私は80年代に米国にいて、日本のホテル会社の進出と撤退を目の当たりにしました。日本のバブル崩壊が撤退の原因とされることもありますが、本当の原因はマーケティング…
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星野佳路
星野リゾート代表
1960年、長野県生まれ。慶応大経済学部卒業後、米コーネル大ホテル経営大学院修士課程修了。91年に星野温泉(現・星野リゾート)代表。温泉旅館だった家業を「世界で通用するホテル会社」にするとの目標のもと、所有と運営を一体とする日本の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、大きく変貌、成長させた。