近藤伸二のアジア新潮流

日本が巨額補助金で招く「台湾半導体TSMC」の実像

近藤伸二・ジャーナリスト
  • 文字
  • 印刷
台湾・新竹市にあるTSMC本社には、創業者の張忠謀氏の業績を紹介するコーナーがある(同社ホームページより)
台湾・新竹市にあるTSMC本社には、創業者の張忠謀氏の業績を紹介するコーナーがある(同社ホームページより)

台湾半導体の日本進出(1)

 半導体受託生産会社(ファウンドリー)世界最大手の「台湾積体電路製造(TSMC)」が、日本初の工場を熊本県に建設することが決まった。総投資額約8000億円の半分程度を日本政府が補助し、岸田文雄首相自ら期待を表明するなど、国を挙げての歓迎ぶりだ。

 日本だけではない。半導体不足で世界が悲鳴を上げる今、各国の関係者が「台湾詣で」を続けている。TSMCとは一体どんな会社なのか?

 TSMCは、台湾政府傘下の工業技術研究院(工研院)の半導体開発プロジェクトを民間移転する形で、1987年に設立された。アジアでよくある官主導の企業なのだが、躍進の鍵はトップの人選にあった。

半導体の“ゲームチェンジャー”

 工研院院長だった張忠謀(モリス・チャン)氏が会長を兼務していたが、88年からはTSMCの経営に専念した。この張氏こそが、半導体業界の“ゲームチェンジャー”となり、同社を韓国サムスン電子などと並ぶ世界トップ企業に育て上げた立役者である。その功績により、台湾では「半導体の父」と呼ばれている。

 張氏は31年、中国浙江省寧波で生まれた。国民党政権がまだ中国大陸にあった時代である。地方政府や銀行の幹部を務めた父の転勤や日本軍の侵攻に伴い、南京や広州、香港、重慶、上海を転々とした。

 そし…

この記事は有料記事です。

残り1378文字(全文1928文字)

近藤伸二

ジャーナリスト

 1956年神戸市生まれ。79年毎日新聞社入社。香港支局長、台北支局長、大阪経済部長、論説副委員長などを歴任。2014年追手門学院大学教授。22年3月に退職し、その後、ジャーナリストとして活動。著書に「彭明敏 蔣介石と闘った台湾人」「アジア実力派企業のカリスマ創業者」など。