近藤伸二のアジア新潮流

台湾半導体「躍進のキーマン」90歳・張忠謀氏の外交力

近藤伸二・ジャーナリスト
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オンライン形式のアジア太平洋経済協力会議(APEC)非公式首脳会議に出席した張忠謀氏(2021年7月、台湾総統府ニュースサイトより)
オンライン形式のアジア太平洋経済協力会議(APEC)非公式首脳会議に出席した張忠謀氏(2021年7月、台湾総統府ニュースサイトより)

台湾半導体の日本進出(3)

 世界の半導体業界に革新をもたらした台湾積体電路製造(TSMC)創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏は、90歳になった今も、財界人の立場を超えて広く台湾社会に貢献し続けている。

 最近では、2021年11月に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に、与党・民進党の蔡英文総統の代理として出席した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ニュージーランドが議長国を務めた今年の首脳会議はオンライン形式で行われた。

 その場で、張氏は台湾が世界のIT産業のサプライチェーン(部品供給網)において取って代わることのできない役割を果たしているとPRし、台湾が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に加入する意義を訴えた。各国で半導体不足が深刻化する中、張氏の発言は重みがあり、参加した21カ国・地域のトップの中でも注目度の高い一人だった。

総統の名代としてAPECに

 台湾は1991年、中国と同時にAPECに加盟したものの、93年から始まった首脳会議には中国の反対で総統は参加できない。APECは台湾にとって数少ない国際舞台であり、総統代理が首脳会議でいかに台湾の存在をアピールするかが極めて重要になる。

 それだけに、総統は右腕と頼る人物を「名代」に指名するのだが、張氏は2006年に民進党の陳水扁総統から経済人として初めて代理に抜てきされ、ベトナムで開かれたAPEC首脳会議に出席した。蔡政権では18年から4年連続で総統代理に選ばれており、今年で計5回目となる。

テリー・ゴウ氏と比べると…

 張…

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近藤伸二

ジャーナリスト

 1956年神戸市生まれ。79年毎日新聞社入社。香港支局長、台北支局長、大阪経済部長、論説副委員長などを歴任。2014年追手門学院大学教授。22年3月に退職し、その後、ジャーナリストとして活動。著書に「彭明敏 蔣介石と闘った台湾人」「アジア実力派企業のカリスマ創業者」など。