身近なデータの読み方

コロナで崩れた収支「雇用保険」負担増は不可避?

篠原拓也・ニッセイ基礎研究所主席研究員
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雇用調整助成金の相談に応じる窓口=2020年5月2日、井手千夏撮影
雇用調整助成金の相談に応じる窓口=2020年5月2日、井手千夏撮影

 昨年来の新型コロナウイルス感染拡大で、企業が従業員に支払う休業手当の一部を助成し、雇用を下支えする「雇用調整助成金」(雇調金)の支給額が大幅に膨らんでいる。雇調金の原資となる雇用保険の保険料だけでは足りず、国の一般会計からの繰り入れなどをしてきた。しかし、それでも資金は不足しており、雇用保険の料率引き上げは不可避の状況となっている。今回は、雇用保険の動きについてみていこう。

雇調金の支給額は4.6兆円超

 まず、コロナ禍での雇調金の支給状況をみてみる。雇調金は2020年4月~22年3月の期間、助成率と上限額の引き上げの特例措置をとっている。支給決定額は20年度が2.9兆円、21年度が12月10日までに1.7兆円で、合計4.6兆円を超えた。現在も、毎週、数百億円規模で支給を続けている。

 政府は急増した雇調金の支給決定額に対して、一般会計から支出をしてきた。これに対して、財務省の財政制度等審議会は21年5月に公表した財政健全化に向けた建議のなかで、「雇用保険財政の逼迫(ひっぱく)に対しては、まずは保険料引き上げによる対応が検討されるべき」だと指摘していた。

 こうした状況を踏まえて、厚生労働省の労働政策審議会(職業安定分科会雇用保険部会)は9月に議論を開始。これまでに、保険料率の引き上げや国庫負担増を巡って検討を行っている。

積立金が急減

 次に、近年の雇用保険の収支状況を振り返ってみる。雇用保険は、失業等給付(失業保険)、育児休業給付、雇用安定や能力開発の雇用保険二事業の大きく三つ…

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篠原拓也

ニッセイ基礎研究所主席研究員

1969年、東京都生まれ。早稲田大理工卒。92年、日本生命入社。2014年から現職。保険事業の経営やリスク管理の研究、保険商品の収益性やリスクの評価、社会保障制度の調査などを行う。公益社団法人日本アクチュアリー会正会員。著書に「できる人は統計思考で判断する」(三笠書房)がある。