
私たちは、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の出現を11月末に知り、巨大な不確実性にさらされた。
それから少し時間がたち、(1)オミクロン株はワクチンによる感染防止効果が従来株より小さい(2)感染拡大スピードは速い(3)しかし、発症しても重症化はしにくい--ようだ、といった知識がわかってきた。株価は当初こそ大幅に下落したが、今のところ戻してきている。正体不明の恐怖感が、知識の蓄積によって和らいだことが背景だろう。
しかし、まだ楽観してはいけない。国内でもオミクロン株の感染が増えれば、再び激震に見舞われるだろう。その場合、人々は緊急事態宣言が再び発令されないかと恐怖心を抱く。仮にオミクロン株が広がっても「最悪のケースは回避されそうだ」と人々が確信するまでは、恐怖心は収まることはない。
事前のシナリオ作りが大切
不確実性に対する有効な備えとは、事前にシナリオを作っておき、予想の範囲内のショックかを常にチェックすることだと筆者は考える。そうした想定がないと、将来の不確実性におびえ続けなくてはならない。
ひとつのシナリオは、オミクロン株の感染が広がっても、重症化した入院患者が…
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熊野英生
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。
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