熊野英生の「けいざい新発見」

「賃上げできない日本」構図を変えるのに何が必要か

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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賃金を上げるために何をすべきか……(東京都内の高層ビル群)=2021年5月18日、本社ヘリから西夏生撮影
賃金を上げるために何をすべきか……(東京都内の高層ビル群)=2021年5月18日、本社ヘリから西夏生撮影

 2022年の経済分野のテーマは「物価上昇と賃上げ」になるだろう。輸入物価の上昇に先導されて、国内の消費者物価も徐々に前年比の伸び率を高めていくはずだ。

 21年11月は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比が0.5%と久しぶりに上昇した。それでも、4月に携帯料金の大幅な値下げがあったため、これが指数全体の伸び率を大きく押し下げている。22年は4月からその要因が一巡し、前年比で1%を超えるくらいの高い伸び率になると見込まれる。

 そうなると、生活コストの上昇に対して、賃金も上がってもらわなくては困るという不満が高まるだろう。そこで岸田文雄首相の掲げる「分配戦略」の役割が極めて大切になる。賃金を引き上げた企業に対して法人税の控除率を大幅に引き上げる「賃上げ税制」に対して、企業がどこまで応じるかが注目される。

法人企業統計で検証

 岸田政権の賃上げ促進政策を考えるときに重要なのは、中小企業の視点である。大企業と同様に中小企業が、税制上の優遇措置に魅力を感じて、積極的に賃上げをしてくれるかどうかである。

 直感的に、大企業は「金余り」で賃上げの余力はあるが、中小企業にはその余力は乏しいと考えられてい…

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熊野英生

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。