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金融所得課税の「1億円の壁」個人投資家への影響は?

渡辺精一・経済プレミア編集部
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 株式売却益など金融所得課税の強化はここ数年、税制改正の焦点となっている。2022年度税制改正では先送りしたが、税負担の公平性から「検討する必要」を明記し、いずれ見直し議論が具体化しそうだ。金融所得課税のありかたは、家計の資産形成プランに大きく関わってくる。議論の方向性を整理しよう。

富裕層ほど下がる「実質税率」

 個人が給料や商売の利益などを得ると所得税がかかる。所得税は、ある人が得た所得を合計して課税する「総合課税」が原則で、所得が高いほど税率が上がる7段階(5~45%)の累進課税だ。また、住民税は個人所得に原則10%(所得割)を課す。つまり所得税と住民税を合わせた実質的な最高税率は55%となる。

 だが、株式などの売却益(キャピタルゲイン)、利子所得、配当所得などの金融所得は、他の所得と切り離す「分離課税」を採る。これは金融資産の海外逃避を防ぎ、課税の簡潔さや中立性・効率性を保つのが目的とされる。税率は一律で、所得税15%(復興特別所得税含まず)、住民税5%。実質的に一律20%だ。

 この結果、金融所得が大きい富裕層ほど実質的な税率が下がり、税制上有利になる。

 国税庁の19年「申告所得税標本調査」で、所得額に対する所得税負担の割合(負担率)を所得層ごとにみよう。所得が上がるほど率は高くなるが、「5000万円超1億円以下」の27.9%がピークで、所得がそれを上回ると率は逆に下がり、「100億円以上」では16.1%になる。これは「1億円の壁」と呼ばれる。

 金融所得の大部分はキャピタルゲインだ。キャピタルゲインは1953年度から長らく非課税で、バブル期の89年に原則課税となったが、…

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渡辺精一

経済プレミア編集部

1963年生まれ。一橋大学社会学部卒、86年毎日新聞社入社。大阪社会部・経済部、エコノミスト編集次長、川崎支局長などを経て、2014年から生活報道部で生活経済専門記者。18年4月から現職。ファイナンシャルプランナー資格(CFP認定者、1級FP技能士)も保有。