熊野英生の「けいざい新発見」 フォロー

緊急事態宣言を発せず「オミクロン株」を乗り切るには

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で広島、山口、沖縄の3県にまん延防止等重点措置の適用を表明する岸田文雄首相(右)=2022年1月7日、竹内幹撮影
新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で広島、山口、沖縄の3県にまん延防止等重点措置の適用を表明する岸田文雄首相(右)=2022年1月7日、竹内幹撮影

 新型コロナウイルスのオミクロン株が国内で感染の猛威をふるい始めた。岸田文雄首相の水際対策はそれなりに成果を上げたが、沖縄県や山口県での米軍基地からの侵入は想定外だった。政府が管理できない地域が存在することは残念で仕方がない。

 オミクロン株は、今のところ感染しても無症状か軽症者が多い。感染していることに気付かずに街中を歩いている人も相当多いはずだ。公表されている新規感染者数が、症状に気付いて検査を受けた人や濃厚接触者などに限定されるとすれば、市中に隠れた感染者はずっと多いと推察される。

 今回、すでに2回のワクチン接種を済ませた人でもブレークスルー感染しているのは、接種から3~6カ月以上が経過して体内の抗体量が減少しているからであろう。早期に接種を済ませた人は、感染リスクがあるということになる。

経済活動の抑制が成長率に影響

 感染者数は増えているが、これまでのところは重症者はごく少なく、入院者数も昨年夏ごろに比べて多くない。また、新規感染者であっても、全員が入院せず、自宅療養も可能になった。医療の逼迫(ひっぱく)は起きにくくなり、緊急事態宣言に追い込まれるリスクは相対的に低くなっている…

この記事は有料記事です。

残り1370文字(全文1868文字)

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。