メディア万華鏡

「分かって当たり前主義」?美術と新聞に通じる古さ

山田道子・元サンデー毎日編集長
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人気の国宝展では好きな作品を前に「自撮り」を楽しむ人もいる=京都市東山区の京都国立博物館で2017年10月31日、小松雄介撮影
人気の国宝展では好きな作品を前に「自撮り」を楽しむ人もいる=京都市東山区の京都国立博物館で2017年10月31日、小松雄介撮影

 大きな石が敷き詰められたその場所に立って相模湾を見渡した時、ワクワクして叫びたくなった。写真家で現代美術作家の杉本博司さんが神奈川県小田原市江之浦地区に作った美術庭園「江之浦測候所」。石造品など約50点のアートを配して作庭されている。

 「ワー」と叫びたくなった後に解説書を見たら、その場所は「石舞台」。「だからか」と得心した。この石舞台は制作時に出土した多くの石を用いている。箱根山の噴火によって流出した溶岩が固まってできた周辺の石丁場の石だという。

 かつて古代人は何かを用いて天空を測候し、自身のいる場所を確認した。それがアートの起源でもあったという。石舞台に連なる石橋の軸線は、春分・秋分の朝日が相模湾から昇る軸線に合わせて設計されているそうだ。それを見たら古代人の気分を味わえるだろう。

かつて「富と権力」を誇示

 「もしかしてこーゆーこと?」と思い起こしたのが、前崎信也・京都女子大准教授(工芸文化史)が著した「アートがわかると世の中が見えてくる」(IBCパブリッシング)。

 「私には感性がないので美術のことが全くわからないんです」。新学期の最初の授業を受けた学生のコメントをきっかけに、日本の芸術の敷居を高くしている理由を、いわゆる美術史ではなく人との関わりで説き起こす。

 日本の美術は寺院や武家など「大きい家に住むお金持ちが、自分の富と権力を誇示するために家に飾るものであり、お金に困った時に換金できる、持ち運びに便利な資産」だった。それらが現在、美術館・博物館に飾られるに至った歴史を詳説。変わらないのは“エリート”のところに美術が集まり、結果、美術品は偉そうなものになっているのだと受け止めた。

 でも、展覧会で超有名な作品を見ても、どこがいいのか分からないことは誰にでもあるのでは。展示の解説文も難しくて意味が分からない(実は私も)。

 例えば、岩佐又兵衛が描いたとされる国宝「舟木本洛中洛外図屏風(びょうぶ)」は…

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山田道子

元サンデー毎日編集長

1961年東京都生まれ。85年毎日新聞社入社。社会部、政治部、川崎支局長などを経て、2008年に総合週刊誌では日本で最も歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長、紙面審査委員。19年9月退社。