
現代のオタク文化を語る上で重要なキーワードとは何だろうか。ニッセイ基礎研究所で現代消費文化を研究する廣瀬涼さんは、前回のインタビューで触れた推し活(応援消費)の他に「物語消費」を挙げる。今回は2021年にゲームが大ヒットした「ウマ娘」に改めて注目し、「物語消費とは何か」に迫った。
現代オタク文化の光と影(3)
――まず「ウマ娘」がどんなコンテンツなのか教えてください。
◆廣瀬涼さん 「ウマ娘」は、かつて競馬の世界で活躍したミホノブルボンやナリタブライアンといった名馬たちをモチーフにし、美少女キャラクターにしたコンテンツです。2016年ごろから漫画やアニメが作られましたが、人気に大きく火が付いたのはゲーム(21年2月リリース)からという印象です。
ただ、ゲームの開発は当初の予定から遅れに遅れました。リリースされたのはアニメシリーズ2期(21年1~3月)が始まってからです。メディアミックス戦略としては決して順調だったとは言えません。
――ところがゲームがリリースされると、21年9月には1000万ダウンロードを突破。数字の上でも大ヒットとなりました。どうしてこんなに人気が出たのでしょうか。
◆ゲーム自体の出来がよかったのはあります。ジャンルも日本人にウケそうな育成ゲームで、ウマ娘たちをコツコツ鍛えてレースに出場させるというものです。また、ストーリーを楽しむだけなら、課金せずとも十分でした。
ですが特筆すべきは「競馬へのリスペクト」が随所に見られることです。競馬ファンは国内に500万人はいると言われますが、この層からの支持を得られたことが大きいでしょう。
ツイッターでは現役の厩務(きゅうむ)員がゲームをプレイした感想をつぶやいて話題になったり、競馬ファンの心をくすぐる展開もありました。
――競馬へのリスペクトとは?
◆実際の競走馬をモチーフにしているコンテンツですから、ウマ娘たちには過去の名馬の名前がそのまま付けられています。ですが引き継いでいるのはそれだけではありません。
体格や性格はもちろん、得意とする距離から逃げ・差しといったレース運びの特徴まで、各キャラクターに丁寧…
この記事は有料記事です。
残り945文字(全文1843文字)
川村彰
経済プレミア編集部
1974年静岡県生まれ。広告記事等のフリーライターを経て、2015年4月、毎日新聞デジタルメディア局に配属。