産業医の現場カルテ

「工場内で救急搬送」対応に手間取った責任者の反省

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 長谷川さん(仮名、50代男性)は、従業員約60人の精密部品製造工場で衛生管理者を務めています。先日、工場の従業員がめまいを起こし、救急搬送されました。産業医である私は、長谷川さんから「職場内の救急対応を見直したい」と相談を受けました。

救急搬送で騒然

 めまいを起こした従業員は、幸い大事には至りませんでした。数日前から体調がよくなかったとのことでしたが、持病はなく、普段通りに勤務していました。ただ、長谷川さんは「救急車を呼んだときに工場内が騒然としてしまい、救急救命士とのやりとりに手間取りました」と、反省していました。

 長谷川さんの工場は、機械類による切り傷や擦り傷、化学薬品によるやけどなど、常にけがをするリスクがあります。けがのリスク軽減のため、従業員に機械類や薬品の危険性を周知したり、職場環境を整備したりしてきました。

 一方で、長谷川さんは今回の救急搬送が起こったことで、実際に急病やけがの際に従業員同士で応急処置ができる体制になっていないと感じました。「私自身、めまいを起こした従業員を目の前にして焦ってしまいました。周囲の従業員も何をしていいかわからず、うろたえている人が多かったです」といいます。

救急の手配で確認しておくべきこと

 私は長谷川さんと相談し、工場内のけがのリスクと、傷ややけどの基本的な応急処置の方法をまとめて、現場で従業員が見やすい場所に掲示することにしました…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。