石角友愛のシリコンバレー通信

「人生一度きり」コロナで広がる米経済の新潮流

石角友愛・パロアルトインサイトCEO/ AIビジネスデザイナー
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米国で注目される「YOLOエコノミ-」。YOLOとは「人生一度きり」を意味する略語だ
米国で注目される「YOLOエコノミ-」。YOLOとは「人生一度きり」を意味する略語だ

 この連載では以前より、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)でライフスタイルを見直す若者世代の話を紹介してきた。例えば、大退職時代を迎えた米国のシリコンバレーから優秀なインド系移民が母国に帰っているトレンドなどだ。

「人生一度きり」

 このように、パンデミックをきっかけに自分の働き方や生き方を見直す人たちが生み出す経済を「YOLOエコノミー」という。YOLOとは「You only live once(人生一度きり)」の略であり、著名歌手が歌詞に使ったことで有名になった言葉だ。

 パンデミックで親しい人を失ったり、生活環境が変わったりすることを強いられる中で、一度しかない自分の人生を後悔しない形で最大限に生きていこう、と思う人たちの行動様式とはどのようなものだろうか。

増える「スモールビジネス」

 写真共有サービスのピンタレストの2022年版トレンドリポートを見ると、21年に一気に増えた検索ワードに「スモールビジネス(小規模事業)」関連が多くあることが分かる。中でも、「アートビジネス アイデア」や「移動型ビジネス アイデア」などの検索数は前年比75~100%も上昇した。

 手作りのアクセサリーなどを作って販売するクリエーターのマーケットプレースである「Etsy」というサイトが成長していることからも分かるように、今後は空いた時間に自分の得意なことや趣味でお金を稼ぐというスタイルの人がさらに増えるだろう、というトレンド予測がなされている。

 実際、スモールビジネスという形で独立起業をする人の数はどれくらい増加傾向にあるのだろうか。

 ある調査によると、米国の中小企業の登録申請数は、17年には約320万件、19年には約350万件と、パンデミック発生前から緩やかに増えていたが、パンデミックが発生した20年は約440万件と大きく伸びたという。その後も増加傾向は続き、21年は500万件を超えるまでに上昇した。

働き方を変える人たち

 このように、スモールビジネスを立ち上げて「空いた時間に稼ぐ」スタイルの人が増える一方で、自分の人生の目的を改めて考え、働き方自体を変える人たちも増えている。

 米紙ニューヨーク・タイムズの記事「Welcome to the YOLO Economy(YOLOエコノミーへようこそ)」に紹介されている、とある30代の弁護士男性の話は象徴的だ。

 彼はある日突然、自宅の台所のテーブルで毎日10時間ほど仕事をしている人生に嫌気がさしたという。そして「何も失うものはない。もしかしたら明日死ぬかもしれ…

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石角友愛

パロアルトインサイトCEO/ AIビジネスデザイナー

 2010年にハーバードビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得後、米グーグル本社でシニアストラテジストとして、多数のAIプロジェクトを手がける。グーグル退社後、人事系スタートアップや流通系AIベンチャーを経て、2017年に日本企業にAI開発を行うパロアルトインサイトを起業。著書に「いまこそ知りたいDX戦略」「いまこそ知りたいAIビジネス」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。パロアルトインサイトHP